先日のブログに「低血糖症が特に女性に多い」と書きました。その理由の一つは、女性の鉄不足にあると思います。
鉄不足と低血糖症がどのように関係しているのでしょうか。

糖質のエネルギー代謝の流れ

まず、糖質のエネルギー代謝についてお話しします。
糖質とは、炭水化物のうち食物繊維を除いたものです。
食事によって得られた糖質は、消化されて主にグルコースとなります。

グルコースからATPを作り出すシステムは大きく分けて2つになります。

1.細胞質内で行われる「解糖系」
2.ミトコンドリアという細胞小器官内で行われる「クエン酸回路」と「電子伝達系」

つまり、食事によって得られた糖質はグルコースとなり、
「解糖系」「クエン酸回路」「電子伝達系」の3段階を経て
ATPというエネルギーの通貨となります。

解糖系というのは嫌気性解糖経路と呼ばれ、
酸素がない状態で代謝が行われるシステムで、
グルコースはピルビン酸という物質になります。
ここでは、グルコース1分子あたり、ATPが2 つ、ピルビン酸も2つ作られます。
1分子のグルコースからATPが2つしか作られないので、
エネルギーの産生効率は良くありません。

解糖系によって作られたピルビン酸は、
細胞内の小さな器官であるミトコンドリアへと入り、
「ア セチルCoA」という化合物に変わります。
このときに必要なのが、ビタミンB1・B2・B3(ナイアシン)・B5(パントテン酸)です。

次に、アセチルCoAはクエン酸回路というところに入りますが、
この回路が1回転する間にATPは2つ作られます。
この際に必要なのがビタミンB群、マグネシウム、鉄分です。

電子伝達系とは、酸素を必要とする好気性代謝といわれるもので、
酸化的リン酸化という変 化が起きます。
ここでは、解糖系やクエン酸回路で生じた
NADHやFADH2の力を利用して、さらにATPを作ります。
最終的に、クエン酸回路と電子伝達系で、ATPは合わせて36個作られます。

このように、「クエン酸回路+電子伝達系」は
とてもエネルギー産生効率が良いのですが、酸素がなければ回りません。
この電子伝達系でも、鉄分が必須になります。

ということで、鉄分が不足していると、
効率よくエネルギーを作る好気性代謝が十分に行われません。
また、鉄が不足して貧血になっていると、
細胞に十分な酸素が行き届かないため、
さらにこの代謝がうまくいきません。
そうすると、効率の悪い嫌気性解糖経路に頼らざるを得ません。
十分なエネルギーが生み出せず、材料の糖質がたくさん必要になってしまいます。
だからすぐに甘いものが食べたくなってしまうわけです。

そして、女性には貧血、鉄不足が多いのです。
その原因としては、毎月の生理が挙げられます。
生理の量が多ければなおさらです。

また、女性は食事の量が少ないことが多く、
肉が苦手だったりすると、鉄分の摂取が少なくなります。
健康に気を使っているつもりで玄米ばかり食べていると、
鉄の吸収を阻害してしまいます。

この鉄不足、実はなかなか表には出てきにくいのです。

というのも、健康診断で貧血の指標とされる
ヘモグロビン(Hb)の基準値が低く設定されていることが多いのです。
本来は12以上必要と考えられているのですが、
検査機関によってはもっと低いところも多いのです。
そうすると、鉄不足が見逃されてしまいます。
また、ヘモグロビンは十分でも、
身体に貯蔵されている鉄の量が不足しているということがあります。
これはフェリチンという数値で表されますが、
一般的な健康診断では検査されませんので、こちらも見逃されやすいのです。

しかし、症状としては貧血と同じようなものが出てくることがあるので、
気になることがあれば、一度フェリチンを検査してみる必要があります。

鉄不足で現れやすい症状には次のようなものがあります。

・立ちくらみ、めまい、耳鳴り
・疲れやすい
・顔色が悪い
・風邪にかかりやすい
・歯茎の出血、アザがよくできる
・頭痛、頭重になりやすい
・注意力低下、イライラしやすい
・のどの不快感
・洗髪時、髪の毛が抜けやすい
・寝起きが悪い
・食欲不振
・神経過敏
・湿疹ができやすい
・肩こり、腰痛、背部痛
・便秘や下痢をしやすい
・吐き気がする
・胸が痛む
・体を動かすと動悸や息切れがする
・まぶたのうらが白い
・皮膚が青白く、または黄色っぽい
・口角、口唇炎、舌のしびれと赤み
・氷を好んで食べる

実は私の場合、ヘモグロビンは十分あったのですが、フェリチンが低かったのです。
症状としても、最後の「氷を好んで食べる」というのが続いていました。
運動をあまりしていませんでしたが、走ったりすると動悸や息切れもありました。

糖質制限をしながらヘム鉄のサプリメントを摂るようになり、
これらの症状がなくなり、フェリチンも上昇していきました。