アトピー性皮膚炎の症状を抑えるのに、ステロイドホルモンの外用剤を使いますが、このステロイドホルモンというのは、私たちの身体でも作られ、常に活躍してくれています。副腎皮質ホルモン、コルチゾールなどと呼ばれますが、腎臓の上に乗っかっている小さな臓器、副腎の中の皮質というところで作られるホルモンです。これが炎症を抑えるために働いてくれます。

このホルモンにはもうひとつ大きな機能があります。それはストレスに対抗するという働きです。つまり、ストレスがかかると、このホルモンがどんどん使われることになります。ということは、炎症を抑える方に回せなくなる、ということになるので、ストレスがかかったり、睡眠不足だったりすると アトピー性皮膚炎の炎症がひどくなる、という現象が起きてきます。

そして、このホルモンの材料となるのがコレステロールなのですが、コレステロールは女性ホルモンや男性ホルモンの材料でもあります。特に女性は、生理前に女性ホルモンの分泌が盛んになり、コレステロールがたくさん使われてしまうため、炎症を抑えるためのコルチゾールに回すコレステロールが足りず、アトピー性皮膚炎が悪化する、ということが起きてくると考えられます。実際、アトピー性皮膚炎の患者さんの血液検査をしますと、コレステロールが低く、 基準値を下回るほど低下していることも多いのです。

コレステロールというと、高いことによる問題ばかりが話題になり、悪者のように扱われることが多いのですが、実はコ レステロールが低いことによる弊害も多く、総コレステロールが160未満だと死亡率が4割上昇するというデータもあります。コレステロールは、ステロイドホルモンの材料になるだけでなく、細胞膜の構造には欠かせない物質であり、神経を包んでいる膜にも豊富に含まれていて、コレステロールが低いと鬱になりやすいというデータもあります。

ですので、いつまでも炎症を長引かせておくということは、コレステロールが無駄に使われるということでもありますし、それに加えてストレスがかかり続ければ、さらにコレステロールが減ってしまうということになります。これでは自分の力で炎症を抑えることがいつまでたってもできません。

だからといって、コレステロールを含むものをたくさん食べればよいのか、というと、そういうわけではなく、コレステロールは肝臓で必要な分を作っていて、一定量に保とうとしますので、やたらと食べたからといって上がるわけではありません。それよりも、ストレスによって消費される量を減らす、つまりストレスがかかり過ぎないようにする、肝臓にコレステロールをしっかり作ってもらえるように肝臓に負担をかけない、ビタミンやミネラルをしっかり摂る、ということが必要になってくるのです。

コレステロールがどのくらいの値だったら適切なのか、についてはかなり意見が分かれます。健康診断でコレステロールが高いと、コレステロールを下げる薬を勧められたりすることも多いのですが、この薬は本当に必要なのでしょうか。

総コレステロールは240~250くらいが最も死亡率が低いというデータもあるくらいです。

血中コレステロールの基準値に関して、2014年に日本人間ドック学会が、性別や年齢に応じたものを提示しましたが、日本動脈硬化学会がこれに反対の立場を示していて、検査機関によって基準値が異なっているのが実情です。

特に女性の場合は、閉経後はコレステロールが上昇するのが当たり前なのです。先ほども書きましたように、コレステロールは女性ホルモンの材料になるもの。その女性ホルモンの分泌が減ることによって、コレステロールが余ってしまいます。コレステロールは肝臓で合成されるのですが、必要なくなったからと言ってすぐに作るのを止めてしまうわけではありません。少しずつ産生スピードを落としていくことになりますから、コレステロール値が高い状態はしばらく続くわけです。

コレステロールよりも中性脂肪のほうが動脈硬化との相関性が高いとも言われ、何らかの炎症も関与しています。高血圧や糖尿病がないのであれば、コレステロール値に神経質になって薬を飲んだ方が良いのかどうかと思い悩まないほうが、幸せな人生を歩むことができると思います。それよりも、生活習慣に気を付けて、適度な運動をすることの方が大事です。