前回の映画のような砂糖の摂り過ぎ、自分はそこまでじゃない、と思われるかもしれません。しかし、私自身、明らかな低血糖症があり、砂糖の悪影響が大きく出ていたにもかかわらず、ずっと問題視せずにいました。クリニックで診療し始めて、砂糖の摂り過ぎによる悪影響が、特に女性に多いと感じるようになりました。

かつて私は翻訳の仕事をしていた時期があり、作業量が多くて納期も短いので、食事をしっかり摂るというよりも、ちょっと手を休めたときに食べやすいものを口に入れる、という生活をしていました。そうして何時間かすると、お腹がすくというより、なんだかソワソワ落ち着かなくなって何か食べずにはいられなくなります。そういうとき、やはり食べやすいのはお菓子や菓子パンのようなものになってしまいます。そんな生活を何年も続けていました。

おそらく私の母もそんなところがあったようで、父が昔から「母さんは、いっしょに出かけるとすぐに何か食べようって言う」と言っていたのを思い出します。だから、私も体質なんだ、と思っていました。時間の自由がきく間はそれほど気にならなかった、つまり、何か食べていたのだと思います。

ところが、クリニックを開業して、食事と食事の間に何も口にできない状況になって、さすがにこれはおかしいと気づきました。3時間の診療時間が持たないようでは困ります。低血糖症の症状・特徴と考えられるものを挙げてみます。

 ・朝、なかなか起き上がることができない。

 ・頭痛、動悸、しびれが、甘いものを食べることで良くなる。

 ・イライラや不安感が甘いものを食べることで良くなる。

 ・イライラや不安感は、安定剤や抗鬱剤を服用しても明らかな改善が見られない。

 ・夕方に強い眠気を感じたり、集中力が落ちたりする。

 ・空腹感を感じ、おやつを食べることが多い。

 ・空腹になると食べずにはいられなくなる。

 ・夜中に目が覚めて、何かを食べることがある。

 ・甘いもの、スナック菓子、清涼飲料水をほぼ毎日摂る。

 ・血縁者に糖尿病の人がいる。

みなさんも、当てはまるものがいくつかありませんか?

それでは、低血糖症の症状はなぜ起きるのでしょうか。

低血糖の症状には交感神経と中枢神経症状の2種類が知られています。

交感神経症状は、低血糖のときに分泌されるアドレナリンなどによる症状で、発汗、動悸、手の震えなどの症状です。

中枢神経症状は、ブドウ糖欠乏による中枢神経のエネルギー不足を反映した症状で、血糖値が50mg/dl以下になると眠気、脱力、集中力低下などの症状が出現します。

低血糖症というのは、体がブドウ糖に頼り切っている状態といえます。身体は脂肪を分解してエネルギーにすることもできるのですが、ブドウ糖が豊富にある状態では、その経路を使いません。常に糖分を摂っていると、このブドウ糖を使う経路に頼り切ってしまうことになります。つまり脂肪を分解することができません。

ということは、身体がブドウ糖に頼り切らないような食事をする必要があります。甘いお菓子だけではなく、ご飯、パン、麺、どれも糖質であり、最終的にはブドウ糖に分解されます。まずはこれらを控える必要がありますが、それだけだとお腹が空いてしまいますし、低血糖症状が出てしまいます。それでは、そうならないための工夫、どうしたらよい でしょう。

低血糖症を克服すべく、私が実践してきた朝食の摂り方をご紹介しましょう。

クリニックを開業してから、最初は家で普通に朝食を摂ろうと思っていました。でも、朝の忙しい時間、なかなかゆっくり食べることができません。急いで食べると途中でお腹が痛くなってしまいそうですし、朝早く起きるのも大変。かといって、何も食べないと、途中でお腹もすくし、、、

ということで、まず、家ではベビーチーズ1個と温かいほうじ茶を口にすることにしました。電車で通勤していたので、その途中で野菜ジュースを飲みます。クリニックに着いてからコーヒーを淹れ、朝作ってきた卵焼きと、クルミを5、6粒いっしょに食べます。これではちょっと物足りないので、黒砂糖がかかったクルミも少し。いろいろやってみましたが、これだけだとやっぱりお腹が空いてしまうんです。そこで、コーヒーにココナッツオイルをティースプーン1杯、コラーゲンの粉を1包入れることにしました。これで3時間の診療も大丈夫です。

朝、おにぎりを食べてみたこともありましたが、そうするとかえってお腹が空いてしまいました。糖質を摂るとすぐに血糖値が上がりますが、それによってインシュリンが分泌され、血糖値がすぐに下がってしまいます。タンパク質や油脂をいっしょに摂らないと、この変動が大きくなります。

ココナッツオイルに多く含まれる中鎖脂肪酸は、体内で分解されやすく、すぐにエネルギー源になります。特に脳のエネルギー源として重要です。アルツハイマー病にも 効果的だという研究結果も出ています。

糖質だけを多く摂ると、血糖値が急激に変化します。血糖値の変動は、ホルモンバランスにも大きく影響し、血管や臓器にも悪影響を及ぼします。タンパク質や油脂を上手に摂ることで、血糖値を一定のレベルに維持することができます。

最近では糖質制限がよく知られるようになってきましたが、糖質を控えるだけでタンパク質や油脂をしっかり摂らないと、どんどん筋肉が減ってしまいますので、注意が必要です。