皮膚病って、なかなか治りにくいものなんです。
まだ大学生だったころ、
皮膚科の授業で先生がこんなことを話されました。

皮膚科は「3ない科」だ。
・死なない。
・夜起こされない。
・治らない。

確かに皮膚病で亡くなるかたはほとんどいません。
夜、起こされることもあまりないですね。
当直をしていて、たまに
じんましんの急患が来ることがありましたが、
病院に到着するころには治まっていたりしました。
なかには「昼間、病院へ連れてこれないから」と
とびひのお子さんを連れてこられた方もいましたが。

そして、確かに、なかなか治らないんですね。
では、なぜ治らないのでしょうか。
もちろん、現代医学ではほとんどの病気を
根本的に治そうとはしていません。

皮膚というのは、人の身体の一番外側を覆っていて、
よく見える、という特徴がありますね。
その分、昔からさまざまな病気が認識されていて
そのそれぞれに見た目で名前がついていました。

目に見える分、何とかしたくて何かを塗って治そうとしました。
皮膚病の多くがかゆみを伴い、かゆいのは厄介なので、
これもすぐに何とかしようとしました。

しかし、何か症状が出るというのは、
なんらかの問題があるということを
身体が訴えているサインなのです。

サインを出すにしても、最初は小さいものです。
身体にとって、重要ではないところから出し始めるのです。

もちろん、身体はどの部分も重要ですが、
命に関わるかどうか、という視点からいうと
皮膚が最も命に関わらない、ということになります。
ですから、最初のサイン、症状が出るのは皮膚、
ということになります。

でも、そのサインをないものとして無視すると、
身体はより強いサインを出して訴えようとします。
症状が強くなるわけです。

それでも無視すると、
今度は、より深いところ、より重要な臓器へと
症状を出すようになります。

「軽い症状を抑えると、病がより深くへと進む」

ホメオパシーを学び始めて、このような考え方に触れ、
なるほどと思ったものです。

ホメオパシーでは、治るときにも法則があると言われます。

1.上から下へ治っていく。
2.中心部から末梢へと治っていく。
3.新しい症状から治り、古い症状が後から治る

1.の上から下へ、というのは、
大学病院にいる間にも経験しました。
決してホメオパシーだけの話ではないのです。

全身に躍進が出た男性の皮疹が、治療をしていくと頭や顔面から良くなり、最後に残ったのは脚の発疹でした。
やはり、顔面や頭部というのは、重要なわけですよね。

2.中心部から末梢へ、というのは、身体と手足を比較すると、
身体の中心部から良くなって、手足の方が後に治る、
ということになります。

3.新しい症状から治って、古い症状が後から治る。
病が進む順序から考えてみましょう。
命に関わりの少ないところから症状が出るのです。
つまり、皮膚症状から始まることが多い。

例えばアトピー性皮膚炎のお子さんが、
ステロイド外用剤で皮膚症状を抑えた後に喘息の症状が出る、
ということがとても多いのです。

そうすると、治るときはより重要な呼吸器の症状、
すなわち喘息から良くなっていく。
そして、皮膚症状が最後まで残るということになります。
だから皮膚の症状はなかなか良くならない、
ということになるのです。

さらに、皮膚というのはある種の排泄機関でもあります。
余計なものを肌から排泄する、ということになり、
病が癒えていく過程で、
皮膚症状として現れてくる、ということが
よく起きてくるわけです。

漢方クリニックで診療を始めたとき、こんな経験をしました。

最初は不眠など精神的に不安定だということで受診された女性が
漢方薬で治療をしていくうちに改善し、
しばらく受診されなくなりました。
数か月ぶりに受診されたとき、
「かゆくはないんですが、皮膚に何かできているので」
ということでした。

診てみると、腹部の皮膚がガサガサになり、
茶褐色のまだらになっています。
診断名を付けることができるようなものではありませんでした。

何か思い当たることはないか尋ねると、
最近、ストレスがかかっていたと言います。
ただ、以前であればこういうストレスがかかると
眠れなくなったり精神的に不安定になったりしていたけれど、
今は、それは大丈夫だと言うのです。

精神的なことというのは、
皮膚よりももっと深いところの話ですね。
以前は病が深くまで達していたけれど、
今は同じストレスでも浅いところで済んでいます。
健康の度合いとしては今の方が良いことになりますね。

皮膚は目に見えるところだけに、
手っ取り早くきれいにしてしまおうと考えがちですが
病としてはまだまだ浅いところにあるうちに
根本的なところからアプローチして改善させたいものです。

根本的なアプローチのひとつが栄養です。
栄養が足りないために皮膚の症状が出ていることがあります。
皮膚に必要な栄養素として
ビタミンB群、ビタミンC、亜鉛、鉄などが知られています。
特にビタミンB群が足りないと皮膚炎が起きることは
昔からよく知られていました。

皮膚に重要、というよりも、
さまざまなところで消費される栄養素なので、
足りなくなると、いち早くそれが皮膚で見える、
ということだと思います。

エネルギー代謝に必須ですし、
神経伝達物質をつくるにも必要。
ストレスがかかるとどんどん消費されてしまうので、
ストレスがかかるとお肌のトラブルが増える、というわけです。

さて、あなたのお肌は大丈夫ですか?