日が長くなり、春らしい季節になりました。桜の花も咲き始め、こんなに気持ちが良い季節のはずなのに、世の中は新型コロナウイルス感染で、何事も普段のようにはいきません。
感染の心配と、仕事や家庭の心配。恐怖やパニックに至るような変化も起きているようです。さまざまな要因が複雑に絡み合って、気が休まらない方も多いことでしょう。ストレスがたまり、夜もちゃんと眠れない方もいらっしゃるかもしれません。
疲れやストレスを上手く解消できていれば良いのですが、真面目で几帳面な人や、内向的な人などはストレスを内にためやすく、上手に発散できなかったりします。
すると自律神経が乱れ、様々な症状が現れます。
[心の症状] 気分の落ち込み、憂鬱、無気力、億劫、イライラ、不安感、焦燥感、思考力の低下など
[体の症状] だるい、疲労感、睡眠障害(寝つきが悪い、眠りが浅い、夜中に何度も目が覚めるなど)、食欲不振、便秘、下痢、腹痛、頭痛、めまい、吐き気など
自然界では春になると植物は芽吹き、動物も活発に活動するようになります。
私たち人間も自然界の変化に合わせて活発になり、五臓の中の「肝」が旺盛に活動し始めます。肝には臓器の働きをスムーズに促進する機能があります。
ところが「肝」はストレスを一番感じやすいところで、精神的ダメージを受けると「肝」の気の巡りが悪くなり、「肝気うっ滞」の状態になります。
さらにその状態が長く続くと「血」「水」の流れに影響し、諸症状を引き起こします。
西洋医学では、はっきりとした診断がつかないような症状も、東洋医学ではこれらの状態に応じて治療を行うことができます。人によって症状は様々ですが、症状や状態・体質を診断し、その方にあった漢方を処方します。つまりオーダーメードの処方です。
「肝」の不調が消化機能である「脾」に影響を及ぼせば食欲不振や胃痛などを引き起こします。
「肝」の失調により十分な血液が「心」に行き渡らないと、神経がピリピリしたり、動悸やめまいが起こったりすることがあります。
漢方治療
実証
- 肝気鬱結タイプ
特徴:胸脇部が張って痛みもある、ため息が多い、イライラして怒りっぽい、憂欝感、脈は弦で有力。
処方:柴胡疎肝散、四逆散合芍薬甘草湯等があります。
2. 肝胆火旺タイプ
特徴:胸脇部張って苦しい、口が苦い、口渇、夢をよく見る、イライラして怒りっぽい、舌紅、脈は弦で有力。
処方:竜胆瀉肝湯、加味逍遥散等があります。
3. 気滞痰鬱タイプ
特徴:抑鬱、喉に詰まり感、胸苦しい、苔白膩、脈弦滑。
処方:半夏厚朴湯等があります。
虚証
- 心脾両虚タイプ
特徴:憂欝、日中考えこむ、胃が張って苦しい、食欲がない、寝つきが悪い、舌暗、苔白、脈弦。
処方:加味帰脾湯、桂枝加竜骨牡蛎湯等があります。
2. 陰虚火旺タイプ
特徴:足腰がだるい、のぼせ、寝汗、イライラ、怒りっぽい、不眠、眩暈、舌紅、苔少、脈弦細。
処方:知柏地黄丸、杞菊地黄丸等があります。
軽い鬱状態の場合は、漢方だけでも良くなることが多いものです。
日常生活や仕事にも支障が出た場合は、漢方だけでは対処しきれないこともありますが、漢方は体質改善には有効であり、また、西洋医学の薬も漢方と一緒に服用することで、少量でより良い効果を出すことが可能です。
今の不調は、状況に適応しようと一生懸命やってきた証拠です。「気合が足りないのか?」とさらに自分に厳しくして頑張ってはいけません。免疫力を下げてしまいます。
一生懸命頑張ってきたのですから、ちょっと一息つきませんか? 今ある状況から一時的でも離れ、忘れる時間を作ってみましょう。
好きな音楽を聴いたり映画を見たりするも良し。スポーツや散歩、アロマバス・・・。自分なりのストレス解消法を見つけ、楽しんでください。
それとともに、心の問題は栄養とも深く関係します。
ストレスによって副腎や脳に負担がかかりますが、そこで多量に消費されるのがビタミンC。ヒトは体内でビタミンCを作れないので、必ず食事から摂る必要があるのです。
ストレスを感じると、副腎という場所からストレス対抗ホルモンを出して乗り切ろうとします。このとき、ビタミンCが必要です。精神的、身体的ストレスを感じたら、良質なタンパク質とパントテン酸、そしてビタミンCを補給して乗り切りましょう。
私たちの心をつくっているのは神経伝達物質ですが、そのうち、興奮系の神経伝達物質であ るノルアドレナリンを合成するときの酵素の働きを助けるのにもビタミンCが関わっています。つまり、元気の源でもあり、ここぞというときの頑張りにも大事なわけです。
ビタミンCを多く含む食品は、果物ではレモン・イチゴ・キウイ・柿など、野菜では赤ピーマン・ブロッコリーなどです。ビタミンCは熱に弱く、加工の段階で多くが失われてしまいますので、感染症の予防やストレス解消のためには、サプリメントを利用することが効果的です。