前回は熱中症にならないためにどうしたらよいか
について書きました。
その一方で、エアコンを使う機会が増えると、
冷えが気になる方も多いでしょう。
また、暑い日々が続くと、
どうしても冷たいものを摂り過ぎてしまいます。 

この季節は、冷たいものの摂り過ぎや
過度の冷房、薄着や運動不足により、
身体の一部に「冷え」を起こしやすい季節でもあります。

昔と異なり、冷房で管理された空間にいることの多い
私たちは、身体を冷やす原因が増えたため、
陽の気を消耗すると同時に、
温度差のある場所への出入りを繰り返すため、
身体が適応しにくくなり、血流を悪くし、
自律神経のバランスを乱してしまいやすくなります。

陽の気を消耗すると五臓六腑の「脾」を弱め、
「気虚」状態を作り出してしまいます。
「気虚」になると、身体が疲れやすい、食欲がない等、
夏バテのような症状を引き起こすので注意が必要です。

また、汗をかかないことで身体の水分の停滞をもたらし、
血流の悪さを引き起こします。

血流が悪くなることによって、血液が全身に巡らず、
さらに血流が悪くなるという悪循環を繰り返し、
貧血や倦怠感を増してしまう原因にもなります。

そのため、この時期は自然のリズムに身を置いて、
身体を守る陽気を消耗し過ぎないことが大事です。

薄手の上着や羽織を用意し、
身体を冷やしすぎないように心がけ、
半身浴や運動を取り入れて
しっかりと汗をかくことが養生のポイントとなります。

また食養生のポイントは以下の通りです。

<食養生のポイント>

1) 冷たいものを摂り過ぎない。
どうしても冷たい食べもの、飲みものを摂る回数が増えるので、
なるべく温かい、もしくは常温の飲食物を摂るように心がける。

2)身体の熱を取る食材で余分な熱を取り除き、
水分を補給する。
・スイカ、トマト、きゅうり、なす、ゴーヤ等の夏野菜、
小豆、緑豆、はとむぎ、とうもろこし、枝豆等の豆類、
グレープフルーツ、パイナップル・・・

3)体内の水分代謝を高める食材を摂る。
きゅうり、なす、ズッキーニ、レタス、スイカ、
メロン、ブドウ・・・

4)胃腸の働きを高める食材を摂る。
豆類、オクラ、じゃがいも、山芋、サツマイモ、トウモロコシ、
かぼちゃ、発酵食品・・・

5)鰻を食べる。
人体の五臓は五行説(木火土金水)において
脾が土性と関係があり、鰻は脾を温める
代表的な食材と言われており、
昔から土用の丑の日には鰻を食べる風習があります。
薬味の山椒も脾を温め内湿を取り除く漢方薬として
使われているものですので、
今年(令和2年)は7月21日、8月2日の丑の日に
鰻を食べてみるのも良いと思います。

6)冷え防止に薬味を利用する。
生姜、紫蘇、長ネギ、みょうが、わさび、山椒・・・
ただし、胃腸の弱い人は消化不良を起こす場合があるので
注意してください。

食生活のバランスを整え、食養生で脾胃を守って
夏バテを予防し、体力をつけ、
ぜひ漢方食養生を通じて、
今年の夏の猛暑を乗り越えてくださいね。

では、食事以外で気をつけることには、
どんなことがあるでしょう?

冷え性というのは、体が冷えているということ。
つまり、熱が足りないということです。
手足の先などに熱が足りないのであれば、
熱を十分に運んでこられないということ。
まず考え られるのは、血流が悪い、ということです。

では、なぜ血流が悪くなるのでしょうか?

特に末梢の血流が悪いのは、自律神経の交感神経が興奮して
末梢の血管が収縮してしまっ ていると考えられます。
自律神経には交感神経と副交感神経があります。
交感神経は、もともと敵から逃げたり敵と戦ったりするのに
適した状態に体全体を整える働きをするものです。
副交感神経はその逆で、身体を休めたり食事をしたりするのに
適した状態に整える働きをするものです。

ところが、現代の生活の中で常にストレスにさらされていると、
この交感神経と副交感神経との切り替えがうまくいかなくなり、
休みたいときに興奮状態が続いたり、
しっかり活動しなければならないのに元気が出なかったり、
ということが起きてきます。
おおざっぱに言えば、これが自律神経失調と呼ばれるものです。

この交感神経が興奮すると、身体は戦闘態勢に入るので、
身体のより大事な部分にしっかり 血液を送ろうとして、
末梢の血管を収縮させます。

また、体を冷やした場合も、それ以上熱が逃げないように、
末梢の血管が収縮します。

手足が冷たいとき、
みなさん一生懸命手足を温めようとしますが、
それとともに身体の中心部を温めないと、
身体は温まっていると感知しません。
手袋や靴下で温かくしていても、
胸元・首 元が大きく開いた服を着ていたり、
腰周りを冷やしたりしてしまうと、
いつまでたっても温まりません。

今の季節、職場のエアコンがつらい、
という女性も多いようです。
冷たい空気は下に溜まりやすいので、
サーキュレータなどを使って空気を動かして、
足元を冷やしすぎない工夫が大切です。
そして、冷えが気になる足元に気をつけるだけではなく、
首元に風が当たらないようにスカーフやストールを使い、
ひざ掛けで腰周りを冷やさないようにすることも大事です。

ちょっとした工夫で冷えを防ぐことができ、
快適に過ごすことができますよ。