喘息とは、発作性にゼイゼイやヒューヒュー(喘鳴)・息が苦しい(呼吸困難)・胸が苦しい・咳 がひどい、などの症状が繰り返しみられる病気です。喘息は呼吸器疾患に限らず、さまざまな病気(心臓疾患など)の合併症として見られます。

日本の医療では一般的に、喘息治療の第一選択として漢方薬を処方することはあまりありません。来院される方の中には、どのほかの症状が主訴で、喘息の持病もある、という方も少なくありません。

実は喘息は体質と深く関係しており、漢方治療では、全身を調整して体質改善することが喘息を根本から治すことにつながると考えています。

また、喘息は季節との関係が深いのです。夏至をピークに自然界の陽気はだんだんと下がり、冬(陰気の多い季節)へ向かいます。秋は陽気が下がり乾燥が強くなっていくので、呼吸器が弱い方にとって影響を受けやすい季節です。寒邪、燥邪の侵入が喘息発作の誘因と考えます。温暖な地域や南国へ移動すると喘息症状が緩和できる例もあり、漢方ではまず身体の陽気を維持する、あるいは高めることが喘息を治めることにつながると考え、治療していきます。漢方医学の歴史では2000年以上前から治療方法が示されている病態なのです。

喘息の急性発作は時に命にかかわる疾患で、有名な歌手テレサ・テンさんが喘息発作で42歳の若さで亡くなったのはその一例です。強い発作で命の危機に晒される際、漢方薬よりも現代医学の薬を優先しますが、軽い発作や寛解期には漢方薬で十分対応できます。

漢方治療は身体全体を診て、さまざまな臓器の働きのバランスを調和して健康体へと導く治療なので、例えば弱っている呼吸器の働きが強くなれば、喘息の再発が治まるのはもちろん、喘息から解放されることも可能です。

喘息の原因

喘息は漢方理論の観点から、外邪(外来の邪気)と内傷(臓器の弱さ)が原因と考えます。正気が身体に十分に存在したら(免疫力が高ければ)、邪気は侵入できない、邪気が侵入できるところは、必ず気が虚して(免疫力が弱って)いる、と考えます。

  • 寒と熱

風寒と風熱:風邪を引くと、暑がり・寒がりの体質に合わせて初期に見られます。

表寒裏熱:熱・悪寒・体が痛いのが特徴の表寒、口渇・煩躁・脈数の裏熱症状があります。

  • 痰と湿

身体の水分の流れが滞ることによります。身体が重く、浮腫んで痰が多い、雨天や梅雨・台風に内外湿気に苦しむことが特徴です。特に体重が標準より多い方によく見られます。

  • 気滞

身体の気の流れが滞ることによります。ストレスの高い環境の中、精神面の症状として気が沈む、イライラなど、また肋骨付近が痛い、不眠、動悸などが現れます。

  • 気陰両虚

気虚:汗をかきやすい、風が苦手、風邪を引きやすい、疲れやすい、という特徴があります。

陰虚:口渇、顔が赤い、寝汗、手足の裏が熱い、皮膚乾燥、痩せ型が特徴です。

  • 腎虚

吸気が困難で全体的に虚弱、腰や膝が痛い、冷え、頻尿、夜間尿、耳鳴り、脈は細く力がな い、という特徴があります。

使用する漢方薬には、小青竜湯、麻杏甘石湯、竹茹温胆湯、柴朴湯、神秘湯、滋陰降火湯、麦味地黄湯などがあり、体質とそのときの状態によって使い分けます。

生活習慣の改善

喘息を改善するためには、生活習慣も大事です。

  • ストレス

ストレスにより、自律神経が乱れたり、体の機能を調節する体内物質のバランスが崩れたりして、喘息が悪化しやすくなります。ストレス発散のため、好きなことに熱中している方が症状は出にくくなるので、あまり心配しすぎず好きなことをしてストレスを発散しましょう。

  • 睡眠

普段の就寝時間が遅くても、一週間に何日かは23~1時の間に熟睡できるようにしましょう。この時間帯は造血・細胞修復・ホルモン分泌が盛んなため、深夜にちゃんと寝れば陰を補うこともできます。適度な運動により睡眠の質を上げましょう。

  • タバコ、ハウスダストなどの刺激源やアレルゲンを避けましょう。

4.気温の変化は発作を誘発するので、室内の温度を一定にしておくのが理想です。

5.犬や猫、小鳥、ハムスター、ウサギなどの毛が抜けるペットは飼わないようにしましょう。

6.標準体重の維持

食べ過ぎや肥満は呼吸器の負担を増やしますし、逆にやせすぎていても横隔膜の呼吸運動 が低下するといわれています。

喘息に即効性のあるツボ

ここで喘息に即効性のあるツボもご紹介しましょう。

急性喘息発作の際は、すぐに病院の手当てを受けることを優先すべきと考えますが、例えば 薬がなく救急車を待っている間、あるいは船・飛行機・山中での再発時、以下のツボを人間の持つ自然薬として使ってみても良いでしょう。

  • 咳喘点を押す

手のひらにあるツボ。手掌側の人差し指と中指の付け根の間、そのちょっと下にあります。

  • 定喘・風門・肺兪を温める

首の付け根の上背部をドライヤーや湯たんぼ、カイロなどで温める。

 定喘:背中の首の付け根で、頭を前に倒した時に大きく隆起する骨は第7頸椎棘突起です。 それと下の第1胸椎棘突起の間の外方左右親指幅半分のところ。

風門:上背部、第2胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方指2本分のところ。

肺兪:上背部、第3胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方指2本分のところ。