●皮膚の炎症を抑えるよりも肌質改善が大事

アトピー性皮膚炎の治療において、皮膚の炎症を抑えることはそれぼど難しいことではありません。中医学(漢方)の“清熱・涼血・解毒剤”などが有効に働いてくれます。

しかし、難しいのは、炎症が抑えられて一時的に肌の症状が落ち着いた後のこと。いかに再発しないようにし、ザラザラのドライスキン(乾燥肌)をスベスベの正常肌に変えることができるか、ということが問題なのです。

体質的な肌の弱さが改善されなければ、一度治っても再発しないという保証はありません。ですから、中医学(漢方)の治療方針としては、赤みやジュクジュク感などの症状を抑えることも大切ですが、それより、急性湿疹症状が落ち着いた後の肌質を改善する治療段階をより重視しています。つまり、漢方薬治療においては、症状が治まったからといって、すぐに中断してしまうのは禁物なのです。まだ完全に皮膚そのものの質が変化していないため、再発の可能性があるからです。完全に肌質が改善されるまで長期的に服用することが、理想的な治療法です。

●養生

冷たいものを避ける、これが原則です。胃腸に負担をかけないように。

●外面のスキンケアと内面のスキンケアが大事

内面のスキンケア:内臓の働きを強くし、体質を改善することによって、綺麗な肌を作る、内側から光り輝くような美しい 肌を得ることができると考えています。特に肺、脾、腎の働きが重要です。これらは正気(エネルギー)の充実と水の代謝に関わっています。

これを助けるものとして、漢方薬が使われます。当帰飲子という処方には皮膚を潤す作用があります。当帰飲子に含まれている生薬の「麦門冬」には、皮膚の表面に水分を引き出す力があるのです。血を補う作用もあります。

漢方の考えでは、皮膚と呼吸器は密接に関連しているんです。昔は、風邪を引かないように、と乾布摩擦なんかをしましたよね。「麦門冬」は、咳の症状に使われる麦門冬湯にも含まれています。

あるアトピー性皮膚炎の方が、咳が長引いているということで麦門冬湯を処方したことがありました。そうしたら、「これまでで一番皮膚の調子がいい!」なんてことになりました。

つまり、異病同治-異なる病気を同じ薬で治療する。これとは逆に、同病異治というのもあります。同じ病気でも治療法が異なる。つまり、同じ病気でもその人の体質や環境などによって治療法が異なるのですね。漢方の面白いところです。

外面のスキンケア: 外面のスキンケアとは、肌の手入れによって強い皮膚を作るケアです。秋口から春先は、空気の乾燥に伴って皮膚が乾燥しやすくなります。乾燥からかゆみも出てきます。クリームなどでスキンケアをしてもなかなか追いつかない、という感じになりがちです。

乾燥する季節のスキンケアは、皮膚の表面にバリアを作り、内側からの水分の蒸発を防ぎ、外からの刺激を遮ることが大事です。油分の多いものが良いのですが、特に皮膚が敏感な方は、ワセリンを使うのが無難です。入浴後のまだ皮膚が濡れているくらいのときに、ワセリンを手に取って、手の平に広く伸ばした状態で、顔や体に押さえつける感じで塗ります。皮膚が乾燥して傷んでいるときには、マッサージするように横に滑らすと、かえってヒリヒリしがちです。ゆっくりと、表面に膜を作るイメージで塗ってください。

スキンケアについては、また改めて書きましょう。