ある患者さんがこんなことを言われました。

「最近よく寝るようにしたら、じんましんがあまり出なくなったんですけど、
何か関係あるんですか?」

はい、大ありです!

あなたは毎晩、しっかり眠れていますか?

「睡眠負債」という言葉が流行して、
眠りに対する意識は高まったかに思われますが、
実際には、睡眠が十分にとれていない方がたくさんいらっしゃいます。

体調が悪いと言ってクリニックへ来られる方のほとんどが、
十分な睡眠がとれていません。
まずは時間的に足りていません。世界的にみて、日本人は睡眠時間が短いのです。
OECDの2009年発表のデータでは、
平均睡眠時間は韓国に次いでワースト2位の7時間50分だそうですが、
アメリカよりも50分、フランスよりも1時間短くなっています。
また、平均睡眠時間が6時間未満の人の割合は
年々増えているというデータもあります。

以前、こんなニュースもありました。

-------------------------------------------------------

厚生労働省が去年11月、全国の20歳以上の男女6500人余りを対象に
睡眠時間などの生活習慣について調査したところ、
1日の平均睡眠時間が6時間未満だった人は、
全体で男性が 36.1%、女性が42.1%にのぼり、
中でも40代が最も多く、
男性が48.5%、女性は52.4%とおよそ半数にのぼりました。

また、平均の睡眠時間が5時間未満という人は、
全体では男性が7.5%、女性が9.2%で、
40代 では男性が11.3%、女性は10.6%でした。

さらに直近の1か月間に睡眠で休養が十分に取れたか尋ねたところ、
「あまりとれていない」 や「全くとれていない」と答えた人は、
全体では20.2%にのぼり、40代では30.9%に達しました。

休養が十分取れていないと答える人の割合は
平成21年の調査以降、徐々に増えていて、
厚生労働省は「睡眠不足になると精神的な病気や肥満、
それに高血圧などにつながるおそれがあり、
働く時間を短くしたり家事を家族で分担したりして
適切な睡眠時間を確保してほしい」と呼びかけています。
(NHK NEWS WEB 2018.09.12)

------------------------------------------------------- 

東洋医学の考え方においても、十分に眠れていないということは、
腎陰を消耗し、心身の働きを低下させてしまいます。

東洋医学の腎はエネルギーの源、また、新しいものを生み出す働きを持っています。
西洋医学でいえば、泌尿・生殖器関係だけではなく、ホルモンにも関係しています。
新しいものを生み出す、というのは、新しい命だけでなく、
日々新しく細胞が再生されることにも関係するわけです。

睡眠をしっかりとることで、
仕事のパフォーマンスが上がり、
病気の予防になります。

お肌だって、どんな高価な化粧品よりも、まずは睡眠です。
「寝る子は育つ」と言いますよね。
睡眠中に「成長ホルモン」が出るわけですが、これは子どもだけの話ではありません。
そして、「成長」といっても、子どもの成長のみならず、
新しい細胞が生み出されること全般に働きます。
ですから、睡眠をしっかりとることでお肌の調子が良くなるのは、
当たり前のことなのです。

また、どんな治療も、睡眠不足では効果が上がりません。

それでは、心地よい眠りを得るためには、どうしたら良いのでしょうか。

快適に眠るためには、眠る準備が必要です。
寝る直前まで脳を興奮させていたのでは、すぐに眠れと言っても無理な話です。
部屋の明るさを落として、身体に夜だということを認識させなければなりません。

また、体が冷えているとなかなか眠れませんが、
体温が高くても眠れないものです。
深部体温が下がってくるところで心地よい眠りに入っていくことができます。
そのためには、入浴で十分に体を温めた後、
2時間後くらいに眠りにつくのがベストです。

眠るためには、朝どのように行動するかも大事です。
体内時計は、朝の光をしっかり浴びることで調整されます。
朝起きてすぐにカーテンを開け、太陽の光をしっかり浴びましょう。

そして、体内時計がうまく働くために必要なホルモン「メラトニン」は、
食事から摂ったタンパク質が分解されてできる必須アミノ酸が必要です。

タンパク質が分解されるためには胃酸がしっかり分泌されていることとともに、
ビタミンC、カルシウムも必要です。
さらに、メラトニンの前駆物質、セロトニンが合成されるまでの間には
葉酸、ナイアシン、ビタミンB6、鉄が必要で、
セロトニンがメラトニンに変化するためにはマグネシウムが必要です。
こうして見てくると、食事のバランスも大事なことが分かります。

睡眠は、健康であり続けるために最も大事なものです。
「働き方改革」は社会や会社だけに任せるのではなく、
ご自分のライフスタイルを見直すことでもできるはずです。