今年は暖冬ですが、朝晩はまだまだ寒いですね。特に冷え性の方にとっては、つらく嫌な季節でしょう。でも、東洋医学の知恵を借りれば、つらい季節を苦のない季節にできるかもしれません。
≪冷え・西洋医学の考え方≫
西洋医学では「冷え」を「冷え性」と書き、「冷えに敏感・寒がりな性質(たち)」とは捉えますが、病気という概念はありません。病気ではないので冷えを治す治療法もありません。
日本女性の半数以上、男性は約一割の方が冷え性と言われていますが、これだけ多くの方が冷えに悩まされながら「冷え性だから仕方がない。」と諦め、自分なりに冷え対策をあれこれ試しながら冷えをしのいでいるのが現状です。
ただし、症状の内容や強さ、血液検査の結果から自律神経失調症や低血圧、貧血などが考えられた時はその治療を行っていくことがあります。
1 自律神経失調症
冷えを語る上で重要なことは自律神経との関係です。私たちが体温を37度前後に維持できているのは自律神経のおかげです。自律神経は、身体を活動させるアクセル役の交感神経と、リラックスさせるブレーキ役の副交感神経があり、お互いがバランスよく働くことによって体温は保たれるのです。ところが、ストレスや生活の乱れなど何らかの原因で自律神経のバランスが乱れると血行が悪くなり冷えが生じます。
2 低血圧
血圧が低いと心臓が血液を送り出すポンプの力が弱いために手足の末端まで血液が十分に行き届かず、冷えにつながります。
3 貧血
身体の細胞は血液中の栄養や酸素を利用して熱エネルギーを作り出します。ところが、貧血になると栄養や酸素を運ぶ血液が少ないため、作り出される熱エネルギー量も少なくなり冷えが生じます。
≪冷え・東洋医学の考え方≫
西洋医学では病気と捉えない「冷え性」ですが、東洋医学では「冷え症」と書き、治療の対象となります。
「冷えは万病の元」と言いますが、冷えは単に身体が冷えてつらいだけではなく、肩こり・腰痛・関節痛・頻尿・膀胱炎・腹痛・下痢・PMS・月経困難症・月経不順・月経痛・アトピー性皮膚炎・気管支ぜんそく等様々な病気を引き起こし、症状が悪化する原因となります。まさしく万の病を招く危険な要素なのです。
病気になる前、つまり「未病」のうちに病の芽を摘み、健康を維持する。それが東洋医学の考え方です。
冷えは病気ではないからどうしようもないと諦めていた方も、東洋医学では治療の対象となるとわかり、希望が湧いてこられたのではないでしょうか。
ここからは、東洋医学的にみた冷えのタイプ(体質)別特徴と原因をお伝えします。
<あなたの冷えはどのタイプ?>
一口に冷えと言っても、原因や体質によって冷える場所も治療法も異なります。東洋医学では「気」「血」「水」のバランスが健康を保つと考えます。
「気」=生命活動のエネルギー
「血」=体を温め滋養する血液や栄養分
「水」=水分代謝や体液など体の水分のこと
これら3つの要素が過不足なくバランスがとれ、スムーズに体を巡っている状態が健康な体なのです。ところが、本来冷えないはずの体が冷えているということは、このバランスが崩れているということです。
まずは自分の冷えのタイプ(体質)を知りましょう。
1 気虚(陽虚)-エネルギー不足
・全身に冷えを感じる
・体を温めるエネルギーが不足することによって冷える
・もともと体が弱く、元気がない
・痩せ型で疲れやすく胃腸が弱い
2 気滞―エネルギーの巡りが悪い
・顔や頭など上半身はほてるのに、手足末端は冷える
・血や熱は気が体のすみずみまで先導するが、ストレスや抑うつがあると気は滞る。
・滞った気は熱を持って上昇するため、上半身はほてり、逆に気が流れない末端は冷えてしまう
・イライラしやすい
・ゲップやおならがよく出る
・生理前にイライラしたり気分が落ち込んだりする
・胸が張る等体調不良が見られる
・不眠になりやすい
・頭痛を起こしやすい
3 血虚―貧血
・体全体の冷えより末端の冷えが目立つ
・熱を運ぶ血が少ない、体は少ない血でやりくりしようとするため、体の中心部の命を支える働きを優先し、体表や末端に血が行き届かず冷えてしまう
・顔色が悪い、皮膚がかさつく、髪が薄い、動悸や息切れなどの貧血症状がある
4 血お(けつお)―血の巡りが悪い
・特に手足の末端がジンジンするほど冷える
・血の流れが悪く、熱が末端までたどり着かず冷えてしまう
・顔色が悪く目の下にくまがある、アザが出来やすい、肩こり・頭痛・月経痛等がある、月経血が黒ずんだり、塊が混ざったりする
5 水毒―水分過多
・夏は暑がりだが、冬は人一倍寒がり
・冷たいものの摂り過ぎ、水分代謝の異常、胃腸機能の低下によって水分過多となり体が冷える
・比較的太った体格でいわゆる水太り体型 お腹にチャポチャポ音がする
・軟便や下痢の傾向、雨の日は体調が悪い、頭や体が重いことが多い
あなたの冷えはどのタイプ(体質)でしたか?
次回は冷えのタイプ別に養生法をご紹介します。