「息災」という言葉があります。
「息」はやめる、防ぐ意。
「息災」とは、
元は仏の力によって災害・病気など災いを除く意。
転じて、健康で元気なさまをいう。

この「息災」が付く言葉でまず思いつくのは、

無病息災。

病気をせず、健康であること。元気なこと。
病気をしないで健康でいられれば、
それに越したことはありません。
ただ、病気をしないでいると、つい油断をして
無理をしてしまいがちです。


人には生まれながらの体質があります。
丈夫な人もいれば、弱い人もいる。

東洋医学には、先天の精という言葉があります。
精とは五臓における腎に蓄えられている
生命エネルギーの結晶のような存在で、
ここから気や血が生み出されます。

精は腎に収められているので腎精とも呼ばれます。
精を獲得するルートは2つあります。

ひとつは誕生の際に両親から受け継ぐ先天の精、
もうひとつは誕生後に飲食を通じて補われる後天の精です。

先天の精は上記の通り、誕生直後から備わっている精であり
人間が成長・発育してゆく原動力となります。
この精の強さが、生まれながらに人それぞれ異なるため、
丈夫な人と虚弱な人との違いが生まれると考えられます。

一方、後天の精は食べ物や飲み物を摂ることによって作られる
気や血の一部が生まれ変わったものです。
精は生命活動を営む上で消費されてゆきますが、
日々補充もされるわけです。

腎精は組織や器官を構成し、
「気」「血」「津液」などとともに、
生命活動や生理機能を維持しています。

この腎精の変化が「誕生〜発育~成長~老化~死」という
人の一生に深く関わっていると考えられてきました。
加齢により、腎の力はカーブを描きながら衰えていき、
年齢によって気になる症状が現れやすくなります。

東洋医学の視点からいう「アンチエイジング」とは、
腎の衰えのカーブをいかに緩やかにしていくかということです。
それには、腎精の維持や補充が役立つと考えられてきました。
腎精が不足して腎虚の状態になれば、
身体の不調が出やすくなります。
しかし、年齢とともに衰えていくことは避けられません。

その分、消費の仕方を考えなければなりません。
クリニックにいらっしゃる患者さんからは
「去年まではこんなことはなかったのに」
という言葉がよく聞かれます。
去年と同じことしかしていないのに、なぜ体調が悪くなるのか?
というわけです。

でも、年齢とともに腎が衰えるのは必至。
その分、腎をいたわるような生活を
心がけなければなりません。
若いころは何でもなかったような徹夜やちょっとした無理が
ものすごく体調に響くようになってきます。

体調の変化に気づいたら、素直に生活を見直し、
ペースダウンをしましょう。

さて、「息災」が付く言葉には
「一病息災」というのもあります。
病気もなく健康な人よりも、
一つぐらい持病があるほうが健康に気を配り、
かえって長生きするということです。


もちろん、病気があればいいということではなく、
あくまでも「健康に気を配り」が大事。
病気になっても薬さえ飲んでいればOK
というわけではありません。

病気のあるなしに関わらず、自分の体質をよく理解したうえで
体調の変化をしっかり感じとりながら
それに見合った生活をしていくことが大切ということですね。

身体の声に耳を傾ける

本当に健康になるために
日頃からぜひ心がけていただきたいことです。