朝晩、だいぶ冷え込むようになってきました。
足元が冷えてくると、恋しくなるのがこたつ。
こたつに入って、みかんを食べる。
寒い時期の楽しみのひとつです。

みかん、と一口に言っても
最近では、さまざまな柑橘類が出回っていて、
味比べをするのも楽しいものですね。

一般的に「みかん」と呼ばれているのは
温州みかん。
今回は温州みかんについて書いてみましょう。

温州みかんは
ビタミンC・ビタミンP(ヘスペリジン)が豊富で、
風邪や感染症が流行る冬にぴったりな果物です。

強い抗酸化作用のあるβクリプトキサンチンも
他の柑橘類に比べて非常に多く含まれているため、
ガンや骨粗鬆症予防効果も期待されています。

温州みかんの栄養成分は、次のとおりです。
エネルギー          46kcal
たんぱく質          0.7g
脂質       0.1g
糖質       11.0g
食物繊維              1.0g
ナトリウム          1mg
ビタミンC           32mg
β-クリプトキサンチン     1700μg
(出典:五訂増補日本食品標準成分表)

オレンジ色の色素であるβクリプトキサンチンなどの
カロテノイドは脂肪につくため、
みかんを大量に食べると皮膚が黄色くなります。
これを柑皮症といいますが、柑皮症の症状は一時的なもので、
健康に悪影響はありません。

温州みかんの果皮を乾燥したものは陳皮(チンピ)と呼ばれ、
漢方薬や香辛料として使用されてきました。
生薬として、日本薬局方に収載されています。
香辛料としては、七味唐辛子の中の原材料になっていますね。

生薬の用途は、芳香性健胃、駆風、去痰、鎮咳薬として、
食欲不振、嘔吐、瀉下、疼痛、咳嗽などに応用します。
漢方処方例としては、平胃散(へいいさん)、
茯苓飲(ぶくりょういん)、六君子湯(りっくんしとう)、
二陳湯(にちんとう)などがあります。

果皮には精油が含まれていて、
精油成分は主にリモネンで、90%を占めます。
果皮にもヘスペリジンが含まれ、
毛細血管の透過性を増大させる作用があり、
もろくなった毛細血管を回復させることが知られているほか、
抗菌、利尿、抗ヒスタミンなどの作用もあります。

「肩こり、腰痛、神経痛、冷え症の改善に、
陳皮を布袋などに入れて風呂に浮かべて、
浴湯料に使用してもよい」
とも言われていますが、そういえば、
漢方系の入浴剤によく使われていますね。

ヘスペリジンは、
温州みかんやはっさく、ダイダイなどの
果皮および薄皮に多く含まれる
フラバノン配糖体(フラボノイド)で、ポリフェノールの一種。
陳皮の主成分でもあります。

ビタミンPとも呼ばれるビタミン様物質の一部です。
ヘスペリジンは本来、
植物の防御に関与していると考えられていて、
抗酸化物質として働きます。

βクリプトキサンチンは、
天然に存在するカロテノイド色素の一つ。
ヒトではビタミンA(レチノール)に変換されるため
プロビタミンAと見なされています。

他のカロテノイドと同様に、
βクリプトキサンチンは抗酸化物質として
フリーラジカルによる酸化的損傷から
細胞およびDNAを保護していると考えられています。

このように、有用な成分を多く含むみかんではありますが、
中国における伝統医学「中医学」においては、
みかんは体を冷やす食べ物として分類されるため、
風邪を引いた際には食べてはならない食品
として認識されています。

そういえば、子どものころ風邪を引いたときに
かかりつけ医に行ったところ、
「みかんは食べるな」と言われたことがありました。
ビタミンCは多いはずなのに、不思議だな、
と思った記憶がありますが
きっと、そういう意味だったのですね。

身体によいからと食べ過ぎて、
かえって体を冷やすことのないようにしましょう。

「過ぎたるは猶及ばざるが如し」
これは何事にも当てはまりますね。