先日NHKスペシャルで、
新型コロナウイルスの特集番組をやっていました。
そのなかで、新型コロナウイルス感染症の重症化の
メカニズムが少しずつ分かってきたという話がありました。

重症化して亡くなった患者さんの身体からは、
血栓が見出されるということが多く、
いわゆる肺炎で亡くなるのではなく、
血栓ができることによって他の臓器も損傷を受けて
亡くなるケースが多いことが分かっています。

また、以前から重症化にはサイトカインストームという
免疫システムの暴走が関与している
ということが言われてきましたが、
このサイトカインストームと血栓との関係が
分かってきたようです。

新型コロナウイルス感染で亡くなった方の血栓の中には、
食細胞(好中球)の死骸がたくさん含まれているのだそうです。
この血栓ができるきっかけが、
サイトカインストーム、免疫の暴走だと言うのです。

では、免疫の暴走とはどういうことでしょう?
それは、体内でウイルスが大増殖したときに、
免疫細胞が過剰に活性化してしまうことです。

そのとき、免疫細胞が誤って血管まで傷つけ、
血栓ができると、これまでは考えられていました。

ところが、さらに恐ろしいことが起こっているというのです。

血液中には、細菌などを食べて
掃除をする役割を持つ食細胞が存在していますが、
感染が起こった後、自分を破裂させて
「自爆攻撃」を過剰に引き起こすのです。
自分を破裂させてウイルスを倒す、
まさしく捨て身の攻撃です。

食細胞は自らを破裂させて
網のようなDNAをまき散らし、
敵を捕らえます。

このDNAはネバネバした性質があり、
敵を捕らえることができます。

通常はこの攻撃で血栓ができることはないのですが、
ひとたびサイトカインストームが起こると、
過剰に活性化した食細胞が大量に自爆し、
まき散らされたDNAの成分が
周囲の血液成分まで固めてしまうのです。

塊となった血液成分が血栓となり、
くっつきあって大きくなり、
血管を詰まらせてしまうことになります。

この過剰な自爆攻撃を
どうやって防ぐことができるのかは、
まだよく分かっていません。

この番組とは関係ありませんが、別の研究によると、
新型コロナウイルス感染症で重篤化する患者さんでは
好中球/リンパ球の割合が高い、という報告があります。

通常、好中球が増えるのは、細菌感染のときで、
ウイルス感染ではむしろリンパ球の割合が
増えることが多いのです。
つまり、ウイルス感染に対抗するには
リンパ球がしっかり働く必要があるということです。

ところが、新型コロナウイルスで重症化した患者さんの場合、
他の検査では細菌感染を疑わせる数値が
高くないにもかかわらず、
好中球の割合が増えているのだそうです。
すなわち、ウイルスに対する免疫が低下していると言えます。

これが、原因なのか結果なのかははっきりしませんが、
もし、重症化する方は感染前から
好中球の割合が高いのだとしたら、
この新型コロナウイルスに感染することで、
好中球の自爆攻撃がより多くなる、
ということも考えられるかもしれません。

それでは、好中球の割合が高い、とは、
どういうことなのでしょうか?

『免疫革命』という本を書かれた安保徹先生は、
免疫細胞と自律神経の関係を明らかにされました。
交感神経が興奮している状態だと好中球の割合が高くなり、
副交感神経が優位になっていると
リンパ球の割合が高くなる、というのです。

この発見のきっかけは、友人の外科医が、
「晴れた日にゴルフへ出かけようと思っていると
必ずと言っていいほど虫垂炎の患者さんが運び込まれてくる」
と話していたことでした。

高気圧に覆われた晴れた日には交感神経が優位になり、
雨が降ったり天気が悪かったりすると、
副交感神経が優位になります。

そして、交感神経が優位になって
好中球が増え、活動が活発になると、
普段は反応を起こさないような細菌に対しても
炎症を起こして、化膿するに至ります。

ストレスがかかったり疲れたりしたときに
ニキビが大きくなって化膿したり、
吹出物ができたり、おできができたり、
という経験はないでしょうか?

この交感神経が優位になった状態だと、
好中球が常在菌にまで反応してしまう、
ということが起きているのです。

好中球が過度に働くと、
血栓をつくるに至らなくても、
組織を損傷することにつながりますから、
こういう状態をできるだけ
長引かせないことが重要になります。

新型コロナウイルスはまだまだ未知のウイルスで、
なぜ免疫の暴走を招いてしまうのかは分かっていません。

でも、好中球が増えるような状態、
つまり交感神経が常に興奮しているような状態を避ける、
ということは重症化を防ぐうえで
大事なことのひとつなのではないでしょうか。

もちろん、新型コロナウイルス感染に限らず、
交感神経が常に興奮している緊張状態というのは、
あらゆる病気をもたらす原因になりえます。
日頃から、休息すべき時はしっかり休息をとる、という
ある意味当たり前のことを今一度見直す必要があります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。