新型コロナ感染症は、2021年9月27日現在、第5波が収まりつつあります。
ワクチン接種のおかげか、緊急事態宣言のおかげか、
収まりつつあることは、喜ばしいことです。

ただ、変異株の流行によって重症患者が増え
感染者の減少のスピードほどには重症患者の数は減っていません。
今後も医療現場のひっ迫が懸念されます。

感染リスクだけでなく、重症化リスクについても
少しずつ分かってきています。

新型コロナと肥満との関係は、これまでにも知られていました。
肥満の場合、新型コロナ陽性になるリスクや
入院・死亡のリスクがかなり高くなります。

中国および英語圏での2019年から2020年に発表された
75の論文をメタアナリシス解析したところ、
肥満を有するCOVID-19感染者には、
次のような事象が見られたということです。

・COVID-19陽性になるリスクは46.0%高い。
・入院するリスクは113%、ICUに入るリスクは74%高い。
・死亡率は48%高い。

2021年9月8日に行われた大阪府の吉村知事の会見でも、
大阪府における同様の傾向が明らかにされました。

大阪府が新型コロナウイルス感染「第5波」で確認された
府内の重症者を調べたところ、
肥満度の目安となる「体格指数(BMI)」が30以上だった割合が
40代以下で2割を超え、20代以下は5割に上るというのです。

大阪府によると、6月21日~9月6日に確認された
府内の重症者683人のうち、
BMIが30以上の患者は80人(11.7%)。

重症者に占めるBMIが30以上の患者の割合を年代別にみると、
20代以下は50%
30代は23.2%
40代は19%
50代は9.6%
60代は4.0%

つまり40代以下が22.7%に上るのです。

肥満が重症化につながる要因として、以下の理由が挙げられます。

・肥満はもともと、血液が固まったり血管が詰まったりしやすく、
感染でさらに悪化する可能性がある
・糖尿病や高血圧などの病気を持っていることが多く、
症状に悪影響を及ぼしやすい
・内臓脂肪の過剰な蓄積によって横隔膜の動きを妨げ、
呼吸器症状を悪化させる

肥満は新型コロナの後遺症を長引かせるという調査結果も出ています。

新型コロナに感染した医療従事者352人を観察した研究によると
入院が必要になったのは3人(0.8%)だけだったのですが、
後遺症のために5週間以内に復職できなかった人が150人以上、
そのうちBMIが25を超えている人が有意に多いという結果でした。

肥満患者のほうが新型コロナは重症化しやすいため、
後遺症も長引いてしまうという因果関係になっているのかもしれませんが、
実際、退院した肥満の新型コロナ患者では、
回復後も肺炎が目立って残存しているというデータもあります。

さらに、肥満は新型コロナワクチンの効果を減弱させる可能性があります。

ファイザー社製の新型コロナワクチンを接種した
医療従事者における抗体価を観察したイタリアの研究では、
腹囲が大きい被験者ほど、2回目のワクチン接種から
1~4週間後の抗体価が低いことが分かったそうです。

同様に、ファイザー社製ワクチンの抗体価をみた研究があります。
男性で腹囲94cm以上、女性で腹囲80cm以上を
腹部肥満と定義した場合、腹部肥満がある未感染者では、
中和抗体が獲得されにくかったそうです。

肥満だけがリスクではありません。
複数のリスクが相互に悪影響を及ぼしていることが考えられます。
現場では、初期から肥満、糖尿病、男性が
ハイリスクであると考えられていました。

65歳以上、男性、2型糖尿病、肥満。
この4つのうち当てはまる項目が多いほど、
新型コロナウイルスに感染した場合、
入院したり重症化したりする危険性が高まるとする研究結果を、
北里大学の研究グループがまとめました。

重症化して集中治療室(ICU)での措置が必要になったのは
1つだと約3倍、4つだと約56倍に増えたそうです。

肥満の人は、積極的にワクチン接種を!
という呼びかけがされています。
しかし、男性、2型糖尿病、肥満、と並べたときに
私の頭に思い浮かぶのは、

ラーメン定食+ビール
コンビニ弁当+炭酸飲料

なのです。すべてではないにせよ、
食事が大きく関わっていることは間違いありません。
肥満がここまで健康に悪影響を及ぼすということ。
それを引き起こしているのが食事だということ。

その事実を、もっと重く受け止める必要があると思います。
食事を改善して肥満を防ぐことでは、
今すぐに新型コロナの重症化を減らすことはできないでしょう。

しかし、それをやらずに
ワクチン頼み、治療薬頼みでは、埒があきません。
将来のことを考えたとき
この新型コロナ感染症から学ぶべきことがあるとすれば
そのひとつが、食事や運動など、日頃の生活習慣の重要性を
今一度見直すことなのではないでしょうか。

そうすれば、必ずや健康寿命も延びるでしょう。
医療費削減にもつながることでしょう。