「腰痛は奥が深い!」という記事を以前書きました。
腰痛だけでも日本人の10人に1人以上が痛みに苦しんでいるということです。
そのほかにも頭痛など、慢性の痛みにくるしんでいる人が大勢います。
痛みというのは、症状の中でも注意をひきやすいものですから
体は何らかの緊急事態に陥っていることを知らせてくれているはずです。
痛い部分になんらか重大な問題があると考えてしまいます。
ところが、慢性の痛みの9割は、脳が作り出していることが分かってきています。
健康な人の脳と慢性の痛みがある人の脳とを比べると
慢性の痛みを持つ人の脳は血流量が少なく、
脳の活動が落ちていることが分かっています。
さらに詳しく、脳のどの部位の活動が痛みに関わっているかを調べると
健康な人の脳は「側坐核」という部分が痛み刺激に対して活性化し、
痛みを和らげていることが分かりました。
ところが、慢性の痛みを持つ人の「側坐核」は
痛みの刺激に対してその働きが弱く
痛みを和らげることができないのです。
痛みというのは、痛みを起こしている部位から
脳の「扁桃体」に信号が送られてくることで感じられます。
ところが、扁桃体は一度痛みを感じると、
痛みにビクビクしてしまい、
患部が完治しても「痛い!」と勘違いする癖があるのです。
特にストレスや不安を感じているとこの傾向が強まります。
そのせいで、痛みが長引いてしまうのです。
この痛みにビクビクしている扁桃体を元の状態に戻してくれるのが
「側坐核」というわけです。
側坐核の働きが活発になると、扁桃体が「もう痛くない!」と感じます。
この側坐核を活発にするのがドーパミンです。
ドーパミンは、嬉しい! 楽しい! 興奮した!
と脳が感じたときに分泌されます。
「痛い!」という脳の誤解を写真で解消しようという本があります。
痛みがなくても見ているだけで幸せになれるので、お勧めです。
『見るだけでしつこい痛みがすーっと消えるすごい写真』
また、ドーパミンは何かを達成していくことで活性化されます。
ポイントは「達成しやすい小さな目標やタスクを設定する」ことです。
目標を大きく設定してしまうと、かえってモチベーションが上がらず、
何も手につかなくなり、燃え尽き症候群のような状態に陥る可能性があるためです。
達成しやすい小さな目標を設定することでドーパミンを継続的に分泌できます。
また、ドーパミンの活性化には「ご褒美」が効果的です。
「この仕事を片付けたら、あのドラマを見よう」とか
「この目標を達成したらあの服を買おう」などご褒美を設定することが有効です。
また、不安やストレスを感じていると扁桃体の癖が強くなるのですが、
その不安やストレスを和らげてくれるのが、セロトニンです。
このセロトニンは、好き!と脳が感じたときに分泌されます。
また、セロトニンは朝、光を浴びることも大切です。
ドーパミンやセロトニンを増やすには、食事も大事です。
ドーパミンの原料となるのは「チロシン」というアミノ酸で、
最も多く含んでいる食品は乳製品です。
正確には、乳製品に含まれている
「カゼイン」と呼ばれるタンパク質から多く摂取できます。
そのため、乳製品の中でもチーズが特にお勧めです。
チーズは生乳の水分を抜いて残ったタンパク質を固めたものなので
最も効率よくカゼインを摂取できる食品といえます。
そのほかの食材として、大豆の煮豆、豆腐、納豆、枝豆、おから、きな粉など、
大豆食品にも多く含まれます。
一方、セロトニンの約90%は「第二の脳」とも呼ばれている
腸の働きによって作られています。
トリプトファンもアミノ酸のひとつですが、
体内では合成できないため食事から摂取する必要があります。大豆製品や乳製品、ゴマ、ピーナツ、バナナなどに多く含まれています。
ドーパミンもセロトニンも、生成されるにはアミノ酸だけでなく、
鉄やビタミンB群が必要ですので、バランスの良い食事を心がけましょう。