先日は、雑草の根が病と同じようだ、という記事を書きました。
雑草が悪者のように感じられたかもしれません。

しかし見方を変えると、
雑草というのは非常に生命力の強い生き物です。
その雑草がどのようにして
成長することができているのでしょうか?

草の根っこを掘り起こしていると、こんな硬い土に、、、
と思うようなところからも、ミミズが何匹も現れてきました。

ミミズがいるということは、土が豊かな証拠。
表面は硬く見えても、土の中はミミズにしっかり耕されて、
根を深く、あるいは四方八方に伸ばすことが
可能になっているのでしょう。

最近『土と内臓 微生物がつくる世界』という本を読みました。
原題は『THE HIDDEN HALF OF NATURE
(自然の隠された半分)』といいます。

土の中には、ミミズをはじめとした
さまざまな小動物や昆虫がいますが、それだけではなく、
土の中には多種多様な微生物が大量にいて、
植物の成長に大きな役割を果たしているというのです。

植物の根からは微生物が集まるような物質が分泌され、
それによって集まってきた微生物が、
そのままでは植物が吸収できないような土壌中の物質を
植物が吸収できる形に作り変えているのです。

また、植物の生長に窒素は欠かせませんが、
大気中の窒素を植物が吸収・利用できる
アンモニウム・イオンに変換しているのは、
土壌中の微生物なのです。

ということは、微生物がいなかったら、
十分な栄養を吸収することができないということですね。

植物を育てるときに、農薬や除草剤、
殺虫剤などを使うということは、
このような微生物を減らしてしまっているということでしょう。
あるいはそのバランスを大きく変化させていることでしょう。
そうすると、栄養の吸収が悪くなるから、
今度は化学肥料によって栄養を与えてやる。

しかし、化学肥料に含まれている栄養素というのは、
おもに窒素、リン酸、カリウム。
植物を大きくはするけれど、
人の栄養でいえばカロリーばかりが高いようなもの。
化学肥料にばかり頼っていると、他の栄養素を
十分に取り込むことができなくなってしまうはずです。

では、有機肥料なら良いのでしょうか?
有機肥料とは、植物や動物など、
生物由来の有機物(炭素を多く含む)からできていますが、
その原料がどこから、どのようなプロセスで
やってきたのかを考えてみる必要があります。
植物であれば、農薬や殺虫剤などを使われたところで
育ったものだとそれらの影響が懸念されます。
動物であれば、抗生物質やホルモン剤の影響が懸念されます。

最近の野菜は栄養価が低いと言われます。
それは土が痩せてしまっているから、と言われていますが、
それは土に含まれる栄養素自体が少なくなっている、
ということではないのです。

微生物が少なくなっているせいで、
土に含まれている栄養素を
十分に吸収することができなくなっている、
ということを指しているのですね。
この点は目から鱗でした。

さて、植物の根が四方八方に広がり、
太い根からも細い根がたくさん伸びていることを考えると、
ヒトの腸内の絨毛を思い起こします。
ヒトの腸の粘膜細胞ひとつひとつの表面には
細かい毛が生えているような構造になっていて、
表面積を増やすことで、食物の吸収を
効率的に行えるようになっています。

そして、ヒトの腸には、腸内細菌と呼ばれる微生物が
およそ100兆個いるといわれています。
ヒトの全身の細胞の数は37兆個ですから、
なんとその3倍になります! この大量の腸内細菌は、
叢(くさむら)とかフローラ(お花畑)と呼ばれるような形で
腸の粘膜の上を覆っているのです。

これらの腸内細菌は、ヒトには消化できない
食物繊維を分解し、ビタミンB6その他の、
ヒトにとって有用な物質を作り出しています。

このように見てくると、ヒトの腸と植物の根が、
同じようになっていることに気づきます。

実は、腸粘膜の細胞からは粘液が分泌され、
それを腸内細菌が食べているということも分かっています。
まさしく共生なんですね。
このような関係は、進化の過程をさかのぼれば、
単細胞生物のころからあったと考えられるそうです。

私たちの体細胞の中には、
酸素を使ってエネルギーを作り出す
「ミトコンドリア」と呼ばれる小器官がありますが、
これは元々細菌だったものを
細胞の中に取り込んだのだと考えられています。

原始の海に浮かんでいた単細胞生物は、
地球上に豊富に酸素ができたときに、
それを効率よく使ってエネルギーを生み出す細菌を
細胞内に取り込んで生き延びてきたわけです。

これまで何となく、
「腸内環境を整えると健康に良い」とは思っていましたが、
ここまで腸内細菌との密接な関係の上に
私たちの身体が成り立っているとは考えていませんでした。

ヒトの腸管をひっくり返すと、
まるで植物の根が表面に生えているような感じになるはずです。
逆に言うと、私たちは腸の中に
大地もろとも根を収めているようなものです。

そんな風に考えていくと、私たちの中に地球があり、
すべてがシームレスにつながっている、
という実感が湧いてくるではありませんか。

その感覚があれば、自分の身体を大事にすることが
自然を大事にすることにつながり、
地球をいつくしむことが翻って自分の健康を支えてくれる、
ということが心の底から納得できるようになりますね。