腸内細菌、腸内フローラという言葉を
よく聞くようになりましたね。

以前、NHKで腸内フローラの番組がありました。
その前から、腸内細菌が重要であるとの認識はありましたが、
その番組で紹介された「便移植」という治療法には
驚かされました。

その取材から得られた情報が詰め込まれた本が
『腸内フローラ10の真実』です。
テレビで放送できたのは、この本に書かれている
10%だけだったそうです。

この本のはじめには、次のような言葉があります。

食事を変えれば、腸内フローラは変わる。
腸内フローラが変われば、「私」も変わる。

私たちが今まで、「個性」と呼んでいたもののなかには
じつは「腸内フローラの個性」が含まれています。

私たちは、腸内細菌と共に生きています。
「私」とは、じつは「腸内細菌と私」なのです。

これらの言葉が意味するところは、
すぐには理解できないかもしれません。

この本を読むと、こんなことが書かれています。

「腸内フローラ」次第で痩せたり、太ったりする。
「腸内フローラ」が糖尿病に関係する。
「腸内フローラ」は「エクオール」を作ってお肌を若返らせる。
「腸内フローラ」には、がんを防ぐ菌と引き起こす菌がいる。
「腸内フローラ」が動脈硬化を引き起こす。アレルギーを防ぐ。「腸内フローラ」で性格が決まる。
「腸内フローラ」がうつ症状と関わっている。
「腸内フローラ」が自閉症に関わっている。

最近、もう1冊の本と出合いました。
『あなたの体は9割が細菌』

このタイトルを見て、「どういうこと?」と思われませんか? 数字の威力というのは、すごいですよね。

これまで長期にわたって腸内細菌の研究が行われてきましたが、
ここ数年で新しい研究による発見が次々とありました。

これまでは培養に頼っていたので、
存在すら分かっていなかった細菌もあったのですが、
遺伝子のゲノム研究が進歩して、
以前は「500種、100兆個」とされてきた腸内細菌の数は、
全体で「3万種、1000兆個」、
1人当たり「200種、100兆個」だと分かりました。

ヒトの細胞は37兆個(かつては60兆個と言われていました)
ということなので、腸内細菌だけでも
ヒトの細胞の3倍近くあることになります。

ヒトの体には、腸内以外にも皮膚表面や呼吸器粘膜など、
外界に接している表面を常在菌と呼ばれる細菌が覆っています。
それらをすべて合わせると、
ヒトの細胞の数の約9倍になるよ、
ということなんです。

この本の原題は「10% HUMAN(10%人間)」。
人間として生きていくのに、
「ヒト」に属する部分は10%に過ぎない、ということですね。

そもそも、腸内細菌の研究が飛躍的に進んだのは、
ヒト・ゲノム計画というものがあったからでした。
ヒトの遺伝子配列がすべて分かれば、
ヒトの病気のことはすべて分かると考えられていたのですが、
実はそんな単純なことではありませんでした。

ヒトの遺伝子の数は2万1000個。
この数は、実は線虫とほぼ同じ、イネの半分。
小さな小さなミジンコでも
3万1000個の遺伝子を持つというのです。

私たちは遺伝子が作るタンパク質によって
体を動かしているのですが、
実はこの2万1000個の遺伝子だけで動かしているわけではない、
ということが分かってきました。

ヒトに住み着いている細菌の遺伝子の数は440万個。
ヒトそのものの遺伝子はその0.05%でしかない、という事実。

これらの遺伝子とそこから作られるタンパク質が、
ヒトに属する部分の遺伝子とタンパク質と
複雑に関わり合いながら、
私たちは生きているということなのです。

ヒトの体の不思議や、病気の治療が
一筋縄ではいかないことを説明してくれるものとして、
「なるほど、そういうことだったのか」
と心の底から納得できました。

さまざまな病気の治療法が日々研究され、
研究結果から有効とされる治療法も、
実際には期待されるほど明確な効果が得られない、
ということはこれまでもありましたし、
おそらくこれからもそういうことは変わらないでしょう。

腸内細菌は、私たちが口から取り入れるものによって
バランスが変化し、作り出すものが変化することで
私たちの体に影響を与えます。
細菌という単細胞の生物であるがゆえに、
環境の変化に対応するスピードも速く、
そのことが人間を支えてきました。

腸は「第二の脳」とも呼ばれていて、
実はさまざまな神経伝達物質を作り出して、
私たちの心身に影響を与えています。

「第二」と呼ばれていますが、
生物の進化の過程から考えれば、
腸が「第一」なのではないかと考えられます。
外界から取り入れたものに対応して内部の機能を変化させる、
その最前線で働く臓器なのですから。
現在の脳は、その機能の一部を特化して
アウトソーシングしているようなものです。

そして、その最前線で働く臓器の表面を
膨大な数の細菌が覆って、さらに多くの仕事をしてくれている。
太古の昔から、ヒトは細菌と共存共栄を図ってきたのです。

この記事のタイトル「あなたはひとりじゃない」
の意味が分かっていただけたでしょうか。

このありがたい細菌たちに感謝し、
彼らの喜ぶような食事、生活を心がけることではじめて、
健康を手にすることができるのだと思います。