かつて、漢方クリニックを開業していたとき、
診察は中医師の先生といっしょに行っていました。
中国で医師の資格を取られた先生方です。

中国では、中医学を学ぶ大学と西洋医学を学ぶ大学が別々にあり
中医学のなかでも専門分野が分かれるそうです。

何人かの先生とごいっしょしたのですが、
そのなかに推拿(すいな)が専門の先生がいらっしゃいました。
推拿とは、漢方、鍼灸と並ぶ中国三大療法のひとつで、
日本では「中国式整体」と呼ばれています。

その先生は、肩こりや背中の痛みなどを訴える患者さんに
姿勢に関するアドバイスをよくされていました。

先生がクリニックに初めて来られたとき、
診療室の私を見て、開口一番、
「パソコンを載せる台を買いなさい」と言われました。
今のパソコンの高さだと、視線が下を向いてしまうので
首や背中に負担がかかるというのです。

クリニックではデスクトップのパソコンでしたので、
モニターを載せる台を早速注文しました。
この台の高さが約8㎝、最初は慣れないので違和感がありましたが
しばらくすると、とても楽になりました。

その後、クリニックを辞めて家で仕事をすることが増えてからのことです。
引っ越しなどで落ち着かないので
ダイニングテーブルでパソコン作業をすることが増えました。
ダイニングテーブルとその椅子に座って
ノートパソコンを使っていたのですが、
1,2か月したころ、腰が痛くなってきました。
肩こりも増えたように思いました。

そこで、まずは、椅子を学習机用のものに変えました。
腰痛はマシになりましたが、パソコンの高さが低すぎることに気づきました。
しかし、ノートパソコンの場合、クリニックで使ったような
台の上にのせてしまうと、キーボードがうまく使えません。
調べてみると、キーボードの部分を斜めにして高さを変えられる
ノートパソコンスタンドがあることが分かりました。
折りたためるので、持ち運びにも便利です。

早速購入してみると、とても首が楽なことに気づきました。
それからは家でパソコン作業をするときは、
部屋を移動するたびにスタンドごと移動させるようになりました。

肩こり・首こり、背中の痛みなど、
運動やマッサージで症状が緩和するとは思いますが、
普段の姿勢が悪いと、すぐに元に戻ってしまいます。

私たちの頭というのは、思いのほか重いのです。
それをこの細い首で支えるために、たくさんの筋肉が
ものすごく頑張っているのです。

頭がバランスよく背骨の上に載っている状態であれば
筋肉にはほとんど負荷がかかりませんが
ひとたび頭が前や後ろに傾いた途端、
筋肉が収縮して支えようとするわけです。

そのような状態が長時間続けば、
筋肉の中を走っている血管は押さえつけられて
血流が悪くなり、老廃物が溜まって
痛みとなって表現されるのです。

さあ、ご自分の普段の姿勢を見直してみましょう。
筋肉ができるだけリラックスした状態になる姿勢を
探ってみてください。