前回のクライアントさんの改善は、
食事やサプリメントによるものだけではありません。
改善してきたとはいえ、咳は続いていましたし、胸痛も続いていました。

そこで、漢方薬の提案もしました。
気管支炎や喘息に用いられる漢方薬とともに
病後の体力をつけることができる
十全大補湯という漢方薬を摂っていただきました。

この漢方薬は、新型コロナウイルス感染症の予防や後遺症対策にも有効です。

というのも、免疫担当細胞の1つであるNK細胞の機能が改善され、
また過剰な炎症を予防することも期待されているからです。
重症化が懸念されるかたにも頼りになるものです。

気力や体力が戻ってきて、前向きな気持ちが出てきたところで、
今まで自分に足りなかったのは運動だ、ということにご本人が気づかれました。

しかし、そのときはまだ咳の影響で胸痛が残っていたため
上半身は動かすと痛みがありました。
そこで、散歩や胸痛に影響の少ない
スクワットから少しずつ始めていただきました。

また、このかたは普段から痰や後鼻漏が多く、
東洋医学的にみると「湿痰」の傾向が強いことが分かりました。
余計な水が溜まりやすいということです。

ご自分でも熱心にいろいろ勉強される方なのですが、
気づかれたことがありました。
それは、床にマットを敷いて寝ているのが
良くないのではないか、ということでした。

床に近いほど空気は冷えやすく、湿気も溜まりやすいのですが、
湿痰の傾向の人はその影響を受けやすいのです。
床に近いということは、ホコリなどの影響も受けやすいので
呼吸器にはよくありません。

以前はベッドに寝ていらしたということでしたので、
元に戻していただくことにしました。
この影響も大きかったと、ご本人が感じられています。

食事や生活環境の改善、漢方薬やサプリメントが功を奏して
心身ともに活力が戻ってくると
この方の本当の問題というのがはっきり見えてくるようになりました。

これまでは栄養失調や低血糖症による症状が邪魔をして
本当に重要な症状が何なのか、見極めがつきにくくなっていたのです。
ホメオパシーのレメディを正確に選ぶためには、
その人のそのときの状態にとって特徴的な症状を
ピックアップしなければなりません。

ようやくそれができる状態になった、という感じがしました。
それまでにさまざまな種類のレメディを使っていましたが、
ある症状が良くなると他の症状が顔を出す、という感じで
すっきりと良くなっていくという実感がなかったわけです。

このような状態は、ホメオパシーによる治療中には起こりうることではあるのですが
通常は一時的なもので終わるはずです。
それがいつまでも続くというのは、どういうことでしょうか?

私は、栄養が足りないことによって、
新しい細胞や組織、物質を十分に作れないせいだと考えています。
ホメオパシーのレメディによって、
それまで滞っていた循環が戻りつつあっても
材料が不足していると新たな秩序を構築することができない、ということです。

肺炎で傷ついてしまった肺の組織を元通りにするための
材料が不足していたら、新しい組織が作られず、
まるで擦りむいた傷がずっと続いているような状態です。
ちょっとした刺激にも敏感ですし、
別の感染症にもかかりやすい、ということになります。

風邪をひいた後、咳がなかなか治まらないということで
咳喘息という診断を受ける方が多いのですが
そういう方の多くが、このような栄養不足によるものではないかと考えています。

西洋医学では、咳が長引いていると
感染が長引いていると考えて抗生物質を変更したりします。
それでも咳が治まらないと、咳喘息と診断して
ステロイドなど喘息としての治療をします。
でも、傷ついた組織を治す手段を持ちません。

新たな組織を作り出すのは、その人自身の体です。
それを応援する手段も、西洋医学にはありません。
東洋医学やホメオパシーにはそれがあります。
そして、材料である食事や生活環境を整えることによって
自分の体が治っていくのを自ら応援する、という姿勢がとても大事なのです。