「朝起きられない」と訴えて受診される若者が
ときどきいらっしゃいます。
漢方薬でも対処はするのですが、
それと同時に、栄養学的なことを考えます。
甘いものを控えていただいたり、
サプリメントでビタミン、ミネラルを補っていただいたり。
特に成長期のお子さんは、成長のために栄養が使われてしまい
機能的なところにうまく回せない、という状況が生じえます。
また、睡眠の質と時間についてもチェックします。
何時に寝て、何時に起きるのか。
寝つきは良いのか、途中で目が覚めるのか、
夢は見るのか。
そして、適度な運動はしているのか。
睡眠の問題を解決しようと思ったら、
日中の過ごし方から見直す必要が出てきます。
先日、中学2年生の女子が受診しました。
授業中に眠ってしまう、というのです。
小学生のときはそんなことはなかったが、
中学に入ってから、そういうことが増え、
最近では、朝起きられないと言います。
ただ、起きられないから学校へ行かないのかと思ったら、
ちゃんと行っているのです。おまけに塾にも行っています。
睡眠について伺うと、寝つきは良いけれど、
何度も目が覚めるのだそうです。
よくよく話を聞くと、中学1年生の夏、塾通いが始まってから
そういうことが増えた、ということが分かりました。
実は、その患者さんを初めて診察したのは中学1年生の秋。
「胃にガスが溜まって苦しい」ということでした。
特に夜が苦しいらしいのですが、
塾に行く前に食事を摂る、ということだったので
せっかくの食事も、ゆっくり、おいしく、
という風にはなりにくそうです。
食べたものがちゃんと消化されていないのではないか、
とも心配しました。
緊張状態で空気を飲み込んでしまう、という
呑気症もあると思われました。
その症状は、漢方薬を飲んで治まっていたのですが、
すでにそのころから、
授業中に眠ってしまうという症状は出ていたようです。
1日のスケジュールを伺うと、
学校から帰って、シャワーを浴び、
食事をしてから塾へ行くそうです。
塾から帰ってくるのが夜10時。
11時には就寝する、とのこと。
しかし、これでは、身体は疲れていても、
頭が興奮した状態のまま、睡眠に突入している感じです。
興奮が治まらないまま、深い眠りに入っていけないのではないでしょうか。
就寝の1時間半~2時間前に入浴し、
深部体温が下がってくる途中で寝入る、というのが
理想的なタイミングです。そのためには、
入浴前には食事を済ませておかなくてはなりません。
食事にしても睡眠にしても、
リラックスモードじゃないと、うまくいきません。
本来なら既にリラックスモードに入っているべき時間帯に
塾で勉強しているわけです。
子どもたちを取り巻く環境は、
もう少しゆとりのあるものであってほしいと思います。