小さいころ、遠足の前の晩に
眠れなかったことはありませんでしたか?
それでも翌朝はまだ暗いうちから目が開いて、
でも決して眠くはない。

同じように、仕事の朝はなかなか起きられないのに、
旅先での朝は、前日に夜更かしをしても
日の出とともに爽快に目覚めたりします。
睡眠の不思議なところです。

この不思議も、睡眠の仕組みを東洋医学的に考えればよく分かります。
東洋医学では睡眠は「心」の働きと関係します。
東洋医学でいう「心」は、現代医学でいう心臓と同じ働きの他、
意識状態や精神活動など大脳の持つ働きもこなします。

この「心」の働きで、昼は活動、夜は睡眠のリズムを作り出すのです。
ところが、「心」は喜びの感情と波長が合いやすく、
嬉しいことがあると勢いが盛んになります。

ワクワク、ドキドキの気持ちが、活動と鎮静のバランスを活動に偏らせ、
睡眠が少なくて済んでしまうというわけです。

ときめきや活動などの性質は、東洋医学では「陽」とされ、
静寂や休息は「陰」に属します。この陰と陽の勢いの変化が、
互いに影響し合いながら自然界のリズムを作り出します。
自然界と身体のリズムが一致していると、体調は良い状態でいられます。

自然界と身体のリズムのズレが体調にどれだけひびくか、
海外旅行の時差ボケで経験済みの人は多いでしょう。
身体を取り巻く環境と精神状態が、生体リズムを左右しているのです。

整体と環境のリズムを一致させる大原則は、
明るいときに活動を、暗いときには鎮静状態を主体にすることです。

言い換えれば、昼間は明るく躍動的に過ごし、
夜は静かな薄暗い環境でのんびりと過ごすことが
良い波長を生むことにつながります。

時差ボケなどで眠れなくなったときには、
まず、夕方から暗く静かな環境を作ること。
精神的にも穏やかなことを考えるようにしましょう。

海外旅行の場合は機内でも夜に相当する時間帯は、
映画を観たり、賑やかな音楽を聴いたりしないほうが良いでしょう。

太陽が出ている間は、できるだけ身体を動かし、
活動中は明るい環境になるように配慮しましょう。

眠くなったら、身体の要求に合わせていつでも眠って良いのですが、
明るい時間に眠るときは30分程度にとどめるようにしましょう。
「陽中の陰」と言って、活動の中にも休息が必要で、
活動と休息のメリハリをつけることが大切です。

生体リズムを一瞬にして変えることは無理ですから、
頭で誘導するよりも、環境を整えて、
あとは身体に任せておいた方が近道です。

必要に応じて睡眠薬などを利用するのも悪くはありませんが、
同時に環境の整備もしないと、強制的に形だけ眠らせても、
かえって身体は迷惑に感じるでしょう。

考えてみれば、深夜まで真昼のように照明を灯し、
街や室内でも刺激的な光や音の洪水に曝されて夜を過ごす現代生活は、
日常的な時差ボケ生活を強いられているようなものです。

森の中での一日を想像して比較してみれば、
現代生活がいかに消耗的で生体リズムを乱すか、
容易に理解できるでしょう。

海外に行ってもいないのに、
時差ボケ生活だけを毎日送らされているとは、
何とも悔しい限りです。

都会にいながらでも、森林生活に切り替えて、
時差ボケ解消してみませんか。