今年の夏は、暑さが半端なかったですが、
さすがに朝晩の気温も下がり、
エアコンなしでも過ごせる日も増えて、秋らしくなってきました。

秋は、一日の気温変化が激しく、カゼを引きやすいものです。
東洋医学では、カゼは寒気が身体に入り込んで起こすと考えられています。

身体に悪さをするものを総じて「邪」と言いますが、
カゼは寒さの邪が突然身体を襲うので、
風が突然吹く様になぞらえて、「カゼ」の語源となっています。

風邪のように突然起きる寒気の邪なので、
正しく言うと風寒の邪ということになります。
こうした邪が身体に侵入しないように体表を護るのは「気」の働きです。

生命の原動力でもある「気」が、
身体の表面をバリアのように取り巻いているわけです。
この「気」は防衛の「気」なので「衛気」と呼ばれます。

季節に関係なく、元気のない人がよく風邪を引くのは、
「気」の総量が少なく、身体を取り巻く「衛気」も少ないために、
邪が侵入しやすいからです。

秋に風邪を引きやすい原因のひとつに、
季節が変わると「気」の分布が変化することが挙げられます。
夏の間は表面や外向きに盛んな「気」の流れが、
秋から冬には深いところに流れの主体を移します。

こうした変化は、自然界でも見られます。
木々は葉を落として生命力を幹に蓄えます。
草花は、地上部分を枯らして生命力を地中の根茎に閉じ込めて、
息を潜めています。

種という形で次の春まで生命力を眠らせてしまうものもあります。
冬を越せない昆虫は、自分自身の生命力は諦めて、
卵や幼虫の形で生命力をつないで冬を越します。

人間の場合は、これほど顕著ではなくても、
生命力の分布が内側を主体とした状態になるのは、
他の自然界の生き物と同じです。

季節が移行する時期には、
「気」の表裏の分布が定まらず、体表を護るバリアにもほころびが生じます。
その隙をついて、容易に邪が侵入します。

したがって、この時期は、手薄になった「衛気」の代わりをする
衣服の役割がとても大切になるのです。

「衛気」のバリアは、生命力のもととなる熱を護っているので、
気温や体温に合わせて、臨機応変に衣服を脱ぎ着して
熱を調節する工夫すれば、「衛気」のバリアの代わりになるわけです。

これからの季節の服装、ぜひ上手に工夫して、
風邪から身を護ってくださいね。