ここ数日、福井生まれの「いちほまれ」というお米を食べています。
同じく福井生まれの「コシヒカリ」の上を目指して創られたお米で、
「オカズがいらないくらい美味しい」と言われています。

あのコシヒカリのひ孫である「イクヒカリ」というもっちり粘りがある品種と
同じくコシヒカリのひ孫である「てんこもり」というきれいな粒の品種を
掛け合わせて生まれた品種だそうです。
つまり、コシヒカリの玄孫(やしゃご)に当たるんです。

普段は、こんな高級なお米は食べません。
いつもなら胚芽米に雑穀を混ぜて炊くのですが、
せっかくお中元でいただいたので、
しっかり味わおうと、白米だけで食べています。

確かにおいしい上に、
夫が明太子なんか買ってきたので、
ご飯がおいしくてたまりません。

ご飯がおいしいのは結構なことですが、
気をつけなければならないこともあります。

米の消費量は減り続けているものの、
日本における主食が「ご飯」であることには変わりはありませんね。

脚気という病気をご存知でしょうか?
古代から死病として恐れられていましたが、
江戸時代になると、「江戸患い」あるいは「大阪腫れ」とも呼ばれるようになり、
裕福な白米多食者で多く発生していました。

明治以降に庶民が白米を多食できるようになると患者は一気に増え、
結核と並んで「国民病」とまで言われるようになりました。
当時はビタミンがまだ発見されていなかったのですが、
偏った食事が脚気の原因であることが判明し、ビタミンが発見されました。

しかし、昭和になってビタミン B1(VB1)欠乏による
栄養障害だと判かってからも、脚気は深刻な医療問題でした。
第二次大戦後、食糧難で多くの国民が栄養失調状態だった頃、
主要穀類への微量栄養素の強化の重要性が紹介されました。


「豊かな米国でも穀類への微量栄養素の補給を国策としている。
脚気対策で玄米食、七分搗米、胚芽米を推奨しても
白米食をやめられない日本において、
いかに解決するかは国民保健上重要な課題である」

そんな中で生まれたのが強化米だったのです。
子どものころ、お米に黄色い米粒が混ざっていたのを覚えています。
あれが、強化米だったのですね。

この結果、脚気死亡者は激減しました。
もちろん、強化米だけでなく、所得の増加に伴って
充実した副食を摂取するようになったことも大きく影響しています。

和食が無形世界遺産に登録され、
長寿国である日本型の食事は健康食であると解釈されていますが、
現実はそうでもないのです。

食事パターンと死亡率を調査した国立がんセンターの報告によると、
野菜類・果物類・芋類・海藻類・きのこ類・魚介類の多い
「健康型日本食」は死亡リスクを顕著に低減し、
次いで肉類が多い「欧米型」も死亡リスクを低減するのですが、
「伝統型日本食」では低減していないのです。

つまり、1970 年代の日本の食事パターンが健康有益性を持つということです。
では、その頃の食事の特徴は何だったのでしょう。

多様性:いろいろな食材を少しずつ食べる
調理法:煮る・蒸す・生を優先した
食材:大豆製品・魚介類・芋類・野菜類・果物類・海藻類・きのこ類・緑茶
調味料:だし・発酵調味料を活かして、砂糖・塩を控える
形式:主食・汁物・主菜・副菜× 2 を基本とした一汁三菜

1970 年代の日本の食事パターンは
ビタミン・ミネラルといった微量栄養素の摂取においても優れていたといえます。

現在の日本では、バラエティ豊かな食事を楽しむことができるようなった一方で、
調理済食品、加工食品、ファストフードの利用増加や緑色野菜の摂取量減少によって
微量栄養素不足による栄養問題が生じています。

VB1 摂取量の年次推移では、男女ともに2012年以降
毎年連続して1.0 mg/日未満で、栄養摂取基準の推奨量を下回っています。
残念ながら、先進国において1.2 mgを下回る国は日本だけなのです。

栄養素バランスの悪い食事を食べても痛みも不快も感じません。
体調不良になっても、それが栄養の問題によるものとは気づきにくいものです。

理想的には、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素は、
新鮮な野菜類や肉類から摂取することが良いと教育されますが、
現在の私たちを取り巻く環境や食生活を考えると、
理想に過ぎないと言わざるを得ない状況です。

強化米などの栄養強化食品を上手に食生活に取り入れたりして、
現代に合った栄養改善が望ましいのでしょうね。