先日、NHKで「超・進化論」の最終回が放映されました。
主役は「微生物」。

取るに足らない存在にも思える微生物ですが、
実はそのシンプルさゆえにどんどん分裂して世代を重ね、
高速で進化するスーパー生物なのです。

そんな微生物は、腸内細菌をはじめ、
他の生き物にも大きな影響を与えています。
さらに、微生物のパワーは、地球環境をも支えていて、
プラスチックを分解する微生物までいるのです。

このブログでも、これまでに腸内細菌や、
皮膚常在菌について書いたことがあります。
腸内細菌が、人には消化できない食物繊維からビタミンB群を作ったり、
太りにくくする物質を作ったりします。

それだけではなく、腸内細菌によって、精神的な傾向が変化することもあり
個性が形作られているとも言えます。

皮膚常在菌や呼吸器の常在菌は、
その他の病原性微生物から守るための物質を産生して
さまざまな感染症を防いでいます。

今回の番組で最も驚いたのは、
ピロリ菌が、気管支喘息などのアレルギーを抑制する
働きをしているということでした。

ピロリ菌は胃に棲みついて、
胃炎や胃癌の原因になるとして、
抗生物質によるピロリ菌除去の治療が広く行われています。

しかし、ピロリ菌を除去してしまうと、
アレルギー反応を起こしやすくなる、ということになります。
ピロリ菌は、胃の中の常在菌とも言われていますので
それを除去してしまうことでバランスが崩れるということでしょう。

顕微鏡ができ、微生物が発見され、
さまざまな病気が微生物によるものとされてきました。
確かに、高い病原性を持つ細菌やウイルスもありますので
それらを取り除くことは非常に重要です。

しかし、抗生物質などは、病原性微生物だけでなく、常在菌まで殺してしまいます。
それまで微生物同士がうまくバランスを保つことで、
身体の機能も正常に保たれていたものが
一部の微生物を取り除くことでバランスが崩れてしまいます。

これまでは、病変から微生物が見つかれば、
病気の原因だとして、それを取り除くことばかり考えてきたわけですが、
これからは、微生物のバランスを保ちながら
病気を治していく方法を真剣に考えていかなくてはなりません。

外からの攻撃をなくす、という考え方ではなく、
内側の守りをしっかり固めるような治療。
治療というよりも、生活習慣を整える、養生というものが
ますます大切だということが、分かってきたということですね。