最近になって腸内環境が注目されるようになり、
食物繊維が重要視されるようになってきました。

かつては、食物繊維は私たちの体だけでは消化ができないので、
食べ物のカスとして便のかさを増やして便通を整える、
くらいの役割しかないと考えられていました。

私たちの腸内には100兆個以上もの腸内細菌が棲みついているのですが、
これらは食物繊維を餌にして、ビタミンB群のほか
体に有用な物質を作ってくれているのです。

腸内環境の善し悪しが影響を及ぼすのは、
痩せや肥満、若返り、糖尿病、免疫、動脈硬化、アレルギーなど、多岐にわたります。

腸内細菌には善玉菌と悪玉菌がいると聞かれたことがあると思いますが、
実はそんな単純な話ではありません。

日和見菌といって状況によって
どちらにも転びうる腸内細菌が70%を占めていて、善玉菌が増えるような環境では
日和見菌が善玉菌のように働き、
悪玉菌が増えるような環境では
日和見菌が悪玉菌のように働くようになるのです。

腸内細菌が喜ぶ食物繊維をしっかり摂ることで腸内環境が整うことは、
「本当の健康」に近づくカギと言ってもよいでしょう。

厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、
1日あたりの食物繊維摂取「目標量」は、
18~69歳で男性20g以上、女性18g以上となっていました。

それが2020年版では、アメリカ・カナダの研究結果に基づき、
成人では理想的には 24g/日以上を目標量とすべきとしています。
ところが、残念ながら実際の摂取量は、
この数値には程遠く12~15g/日なのです。

食物繊維摂取量は、数多くの生活習慣病の
発症率または死亡率との関連が検討されています。

例えば、食物繊維をほとんど摂取しない場合に比べて、
20g/日程度摂取していた群では心筋梗塞の発症率が15%ほど低かった
と報告されています。

また、メタボリックシンドロームの発症率は
食物繊維摂取量が多いほど低くなる傾向があります。

2型糖尿病の発症率との関連では、
20g/日以上摂取した場合に発症率の低下が観察されています。

また、ヨーロッパでの大規模な研究では、
食物繊維摂取量と体重増加の間に負の関連が観察されています。

各種生活習慣病の重症化予防においては、食物繊維の積極的摂取が推奨されます。
25〜29g/日の摂取量で最も顕著な効果が観察されたという報告があるのですが、
これは現在の日本人成人の食物繊維摂取量に比べるとかなり多くなっています。
したがって、摂取基準量は現実的に少なめに設定されているのです。

食物繊維は、魚介類や肉類などの動物性食品にはほとんど含まれず、
植物性食品に多く含まれます。
お勧めの摂り方は主食の穀類から摂ることです。
1日のうち1食を玄米ごはん・麦ごはん・胚芽米ごはんに置き換えると、
効率的に食物繊維が摂取できます。

また、豆類・野菜類・果実類・きのこ類・藻類などにも多く含まれ、
それぞれに異なる種類の食物繊維であり、働きも異なります。
これらの食材をバランスよく毎日の食事に取り入れましょう。