これまでに、発達障害に関する本はたくさん読んできました。
専門家が書いた本だと、専門的過ぎ、
学問的な問題や診断に関することに終始していて、
漠然とし過ぎていることが多いように思います。

一方、当事者が書いた本や、実例を集めたものだと、
偏りがあり過ぎて、参考になりにくいことも多いと思います。
その点、この本は、重要なのは「診断」よりも
「特性」への理解だとしているところが、とても納得できました。

一口に発達障害と言っても、ひとりひとりその状態が異なっていて、
いくつかの特性がオーバーラップしていて、
その割合も程度もひとりひとり異なります。

それがグレーゾーンと呼ばれる、程度の軽いものであると、
本人も周囲の人も気づきにくくなります。

なんだかおかしい、何かがおかしい、
と思いながらも、どこがおかしいのか、どうしたらよいのか、
分からないまま、時間だけが経過してしまうことが、
非常に多いように思います。

グレーゾーンということは、程度が軽くてはっきりとした診断がつかない、
ということではありますが、だからといって、
生きやすいわけではありません。
実際には、かえって生きづらいことの方が多いのです。

普段の生活の中ではすぐには分からない程度の特性であると、
そのほかの能力で何とかカバーして頑張っているかもしれません。
すでにものすごく頑張っているにもかかわらず、
さらにそれ以上のことを要求されてしまったりするわけですから。

そんな、発達障害のグレーゾーンに光を当てた本に
昨年末に出会いました。

発達障害「グレーゾーン」 その正しい理解と克服法

この本は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2023」
リベラルアーツ部門にノミネートされています。

発達障害について、「リベラルアーツ」として知るという視点は、
今後、社会が変わっていくためには非常に重要だと思います。

多様性が叫ばれる時代にあって
多様性を認めつつ、困難を理解したうえで
その困難にどのような支援ができるのか。

特性を個性だとかありのままで良いとか片付けるのではなく
特性をよりよく理解したうえで、必要な支援を提供できる社会。
そんな社会にするために、ぜひ読んでいただきたい1冊です。

ちなみに、昨年の「読者が選ぶビジネス書グランプリ」では、
「認知症世界の歩き方」という本に投票したのですが、
この本は、見事リベラルアーツ部門グランプリを受賞しました。

この本も、認知症のかたの生きづらさを解決しようとした本です。
このような本によって、社会が少しずつ変わっていくことを願っています。