みなさんは、「認知症」というと、
どんなイメージをお持ちでしょうか?
ご家族に認知症のかたがいらっしゃれば、
ある程度、どのようなものかは分かると思いますが、
それでも、認知症のかたにどのように接すればよいのか、
日々苦労されているかもしれません。
私の母は5年前に亡くなりましたが、
亡くなる数年前から認知症を患っていました。
とはいっても、母が認知症であると気づくまでには
かなりの時間がかかりました。
同居していても、あるいは、同居しているからこそ
気づかなかったのかもしれません。
母は元々天然なところがあったので、
歳をとると、その辺もひどくなるのかな?
くらいに思っていた時期もありました。
それでも、あまりに症状がひどくなると
私の方が受け止められず、イライラして
母娘喧嘩のようになってしまうこともしばしば。
そのころ手にした本には、とにかく
「否定せずに、受け止めること」と書かれているし
認知症の親の介護をしっかりしている人の本を読むと
かえって自己嫌悪に陥り、つらくなってしまっていました。
最近、とても良い本を見つけました。
そのころの自分に読ませたい!と思ったので、ご紹介します。
『認知症世界の歩き方』
この本は、「認知症のある方が生きている世界」
を、実際に見られるように、というコンセプトで作られています。
認知症の方ご本人にインタビューを重ね、
「語り」を蓄積することから始め
それをもとに、認知症の方が経験する出来事を
旅のスケッチと旅行記の形式にまとめているのです。
写真は、この本の巻頭にある認知症世界の地図です。
ここには、
乗っていると記憶をどんどん失ってしまう
「ミステリーバス」
人の顔を識別できなくなる
「顔無し族の村」
会計までにいくつものハードルがある
「カイケイの壁」
あっ!という間に時間が経つ
「トキシラズ宮殿」
腕の進む方向を見失う
「服ノ袖トンネル」
などが描かれています。
そのそれぞれでどのような現象が起きるのか、
認知症の当事者の経験から具体的に書かれているので
認知症のかたがどのように世界を認識しているのかが
とてもよく分かります。
認知症の人の頭の中がどうなっているかをのぞける本
とも言えます。
これを読みながら、当時の母が
何を見て、どう感じていたのかが
ようやく分かるようになった気がします。
この本の「おわりに」に
「認知症の課題解決は、デザイナーの仕事だ」
と書かれていたのが、とても印象的でした。
デザインというと、なんだか芸術的なものばかり思い浮かべてしまいますが、
「デザインとは人間とモノ・サービス・環境・情報との幸せな関係を創る行為」
と書かれていて、とても素敵な言葉だと思いました。
色覚特性を考えた色のユニバーサルデザインについては
以前、このブログでも書きましたが、
色以外のあらゆる場面で、混乱を生じにくいデザインが
求められています。
この本の良さは、なにより楽しく読めるというところです。
超高齢化社会へと突き進んでいる現在、
とても頼りになる本だと思います。
ぜひ手に取ってみてください。
認知症世界を歩いてみる
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