先日、8月5日に「限りある医療資源を有効活用するための
医療機関受診及び救急⾞利用に関する4学会声明」が出されました。
https://www.kansensho.or.jp/modules/topics/index.php?content_id=50
そのなかには、次のようにあります。
症状が軽い場合は、65 歳未満で基礎疾患や妊娠がなければ
あわてて検査や受診をする必要はありません。
⾃宅療養を続けられます。
この場合,新型コロナウイルス専⽤の特別な治療は⾏いません。
医療機関での治療は、つらい発熱や痛みを和らげる薬が中⼼になり、
こうした薬は薬局等で購⼊できます。
限りある医療資源を有効活⽤するためにも、
検査や薬のためにあわてて医療機関を受診することは避けてください。
また、次のような解説も付け加えられました。
オミクロン株への曝露があってから平均3⽇で急性期症状
(発熱・喉の痛み・⿐⽔・咳・全⾝のだるさ)が出現しますが、
そのほとんどが2〜4⽇で軽くなります。順調に経過すれば、
“かぜ”と⼤きな違いはありません。
新型コロナウイルスの検査を受けることは⼤切ですが、
検査を受けることができなくてもあわてないで療養
(⾃宅での静養)することが⼤切です。
かかった後に重症化する⼈の割合は、
厚⽣労働省から毎⽇報告されている資料から
数千⼈に⼀⼈程度と推定できます。
この声明がメディアで報道された際、
多くの方に「コロナは普通のかぜ」と言っているような
受け止められ方をされました。
確かに「“かぜ”と⼤きな違いはありません」とされてはいますが、
その前に「順調に経過すれば」という前提があることを忘れてはなりません。
ところで、そもそも「かぜ」とは何でしょうか。
医学的には「かぜ症候群」と呼ばれますが、文献的な定義は
「様々なウイルスによって起こる疾患群で、良性の自然軽快する症候群」
とされていて、咳、鼻、喉の3つの症状が同時に、
同程度存在する病態と理解されています。
ここにある「症候群」とは「病気の原因が不明確ながら、
共通の症状や検査・画像所見を示す患者さんが多い場合に、
そのような症状の集まりに名前をつけて扱いやすくしたもの」
と言われています。
つまり、明確な原因(病原体)を見つけることが
難しい状態であることが分かると思います。
この「かぜ症候群」は、通常の経過では、
まず微熱、だるさ、のどの痛みなどから始まり、
1、2日遅れて鼻の症状が出現し、咳や痰が出てきます。
症状を自覚してから3、4日くらいでピークを迎え、
1週間程度で徐々に回復していきます。
このことから分かるように、「かぜ」というのは、
特に治療しなくても自然軽快するものということであり、
経過してみて初めて診断できるものなのです。
ということは、症状が出始めた時点で「かぜ」と診断できるわけではなく
経過を見ながら重症化しないことが確認できて
初めて診断できるわけです。
結局のところ、かぜのような症状というのは、
経過を観察しながら、症状の変化に応じて対処する、
ということに尽きるわけです。
そのような状況に対して、家で対処できるような方法を
身につけていなければならないはずなのですが、
国民皆保険が整えば整うほど、
その機会が奪われてしまったと言えるかもしれません。
今、その点について見直すべき時期が来ているように思います。