夏休みが近づいています。旅行の計画はおありですか?
旅先で病気になると、普段以上に不安になるものですよね。
医師に診てもらうのが一番良いのでしょうが、
旅程の変更や見知らぬ土地での受診は躊躇してしまいますね。

こんなときのために常備薬があると心強いものです。
薬を過信するのは良くありませんが、
ちょっとした不調なら早めの対処で、旅の予定を崩さずに、
崩した体調を元に戻すことができるかもしれません。

何を準備するかは、自分が日頃なりやすい病気の薬のうち、
効果の確かなものを考えると良いでしょう。
初めて飲む薬は、旅の薬には向きです。
普段なったこともない病気のことまで心配してもきりがありません。

予想外に出た不調は、勇気を出して現地で医療を受けましょう。
薬の多くは、症状を軽くするだけで、
急場しのぎに過ぎないということは
心得ておくべきことです。

薬で病気そのものが治るわけではないので、
症状が消えたからと言ってハードなスケジュールをこなしていると、
病状を悪化させます。病気の回復には睡眠が不可欠です。
夜間の予定だけでもゆとりを持って、睡眠を十分に確保しましょう。

また長旅での病気の場合、いつまでも自前の薬に頼っているのは危険です。
1~2回服用して回復の兆しがない場合は、ちゃんと診察を受けましょう。
たくさんの薬を準備することよりも、安心のための本当の準備とは
いつでも気軽に医療を受けられるようにしておくことです。

以上のことを理解していただいたうえで、
旅の常備薬のひとつとしてお勧めするのが、葛根湯です。

「葛根湯医者」というのをご存知でしょうか?
落語に登場する、どんな病気にも葛根湯を使う医者です。

葛根湯は実際にいろいろな病気に効く、
天下の「宝湯」とも言える薬なのです。
万能薬としての秘密は、その成分構成にあります。

葛根はカゼや下痢を治し、筋肉の凝りを取ります。
生姜や桂枝は身体を温め血液の巡りを良くします。
気を全身に巡らせる麻黄には、エフェドリンという
鎮痛解熱剤に使われている成分があり、現代薬の生みの親でもあります。

甘草には、非常時に身体が出すホルモンに似た作用があり、
芍薬とともに緊急状態を和らげ、
また大棗や生姜とともに胃腸の調子を整えます。

こうした構成から、身体を温めて気の流れを盛んにし、
体表に気の流れを誘導して、
寒邪と闘う「衛気」に援軍を送ります。

寒さが体表や胃腸から侵入しようとすると、
さむけ、うなじの張りや頭痛、節々の痛み、鼻水、
冷え感を伴う腹痛、下痢などを生じます。

こうした寒邪と身体の闘いを実感したら、
すぐに葛根湯を飲んで、
その夜は十分休養をとって寝る。

このような使い方ができる葛根湯は
「旅先の宝湯」とも言えるでしょう。